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『視覚障害者としてできること、手助けしてほしいこと』(第2回)
『視覚障害者としてできること、手助けしてほしいこと』
母子健康手帳は妊娠届の提出と同時に交付される、いわば全ての母親にとっての育児指南書である。しかし、視覚障害者は妊娠・出産・育児の情報にアクセスしづらいのが現状だ。今回視覚障害を持ちながら育児をしている母親3人に話を伺った。併せて点字版やマルチメディアデイジー版といった墨字(印刷された文字)によらない、母子健康手帳の大切さについても語ってもらった。
②インタビュー:寺西美予(てらにしみよ) 51歳(取材当時)
<プロフィール紹介>
先天性視覚障害を持つ。36歳ごろまでは光覚機能、右目に色覚機能あり。大学で子供の成長に興味を持ちつつ、一般企業2社で計9年間、電話交換・店内放送に携わる。現在長男(高3)・長女(中3)を育てながら、盲導犬と共に暮らしている。
寺西さん「障害者の立場として発信できることはしていきたい」
視覚障害者について知ってもらうために
幼い頃わずかな視力があった右目も、第2子の長女が1歳になった頃全く見えなくなった。盲導犬を取得してもっと行動範囲を広げようと決めたのは長女が3歳の時だ。
盲導犬に慣れた頃、視覚障害をもっと知ってもらいたいと、長女が通う幼稚園の絵本読み聞かせグループでボランティア活動を始めた。今も2か月に1回、持ち時間20分の中で平和についてなど子どもたちに伝えたい本を選んで読み聞かせている。
また、名古屋市や日進市社会福祉協議会主催の福祉実践教室に6年前から参加し、子どもたちの点字体験や講演会を定期的に開いている。講演会では、視覚障害を持っていてもできること・できないこと。そして、盲導犬について話す。
盲導犬がいるといろいろな場所に一人で行ったり、急な買い物や外出などできることが増えるが、やはりできないこともある。
例えば電車の中で「席をどうぞ」と譲られると盲導犬がいても席を確認することができない。そこで、どうすればいいのかを寸劇で見せている。学校での講演会の場合は教員に通行人を演じてもらい、参加型で行えるよう工夫した。寸劇で演じることで、「こんな風にすると生活がしやすいんだ」と気付いてもらいたいのが狙いだ。視覚障害者本人から発信することで、障害を身近に感じてもらえるようになるといいと思う。
子育てのことを聞いてもらうだけでもうれしい
子育てについては気持ちが固まってから妊娠したので、不安はあまりなかったように思う。育児書に頼るよりは、同じ障害がある周りにいる子育ての先輩ママたちに聞きながら実践を積んだ。長男・長女もそれぞれ1歳半頃になると、母親に視覚障害があることに気付いたようだった。例えば「犬はどこ?」と聞くと指を持って導いてくれたことがある。気付かれたことにドキッとしたと同時に感動を覚え、コミュニケーションは肌で感じとるものだと実感した。
保育士からは早く保育園に入れることをしきりに勧められたが、手元で育てたいという思いから強く抵抗した。長女は3歳から保育園に通わせたので、手元で長く育てられ、〝子育てができた!〞と強く思えた。障害があっても子育てはできると実感できたことで、とても勇気をもらえた経験だった。自治体職員には、子育ての仕方を無理強いせず、一人一人に合わせてサポートしていただければと思う。月1回、困っていることやうれしいことについて聞いてもらえるだけでも、気にしてくれていると実感できる。
子育ての情報を得るために点字版母子健康手帳も入手したかったが、長男を妊娠した際「置いていない」と言われたことを覚えている。長女を妊娠した時に、二人分の点字版を入手することができたものの、〝もっと早く手に入れられたら〞と思った。自治体職員には視覚障害に関する情報共有をより多くし、指導していってほしい。他にも母子健康手帳を使う上で気付いたことだが、大きくなってからの記録ができるページがあればもっと使いやすくなるのではないだろうか。
また、病院に行くときなどの移動支援事業についてもガイドヘルパーを利用するのだが、子どもの付き添いの場合だと「その他の外出」の扱いになるため月の時間制限が厳しい。そうなると急用が多い子どものために時間を割くことが難しいので見直してほしい。
全体的に、名古屋市での子育てはしやすい環境で、定期的に保健師が電話をくれたり、頻繁に訪問してくれたり、気にかけてもらえたことはとてもうれしかった。名古屋市にはこれからもきめ細かなサービスを展開していってほしいと願う。
『視覚障害者としてできること、手助けしてほしいこと』は全5回掲載しました。
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