機関紙

<57>スポーツ医学から、健康医学、予防医学へ 四季レディースクリニック(東京都中央区) 江夏 亜希子

2014年12月 公開
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江夏氏

スポーツ医学から、健康医学、予防医学へ



四季レディースクリニック(東京都中央区) 江夏 亜希子

 

 

 

 

 

 

五輪を見てスポーツドクターを目指す
医師になりたいと思った契機は水泳のオーバートレーニングで体調を崩し、悶々と過ごした中学2年の夏休み、テレビで見たロス五輪。「あの舞台に立ちたい」と憧れつつ、「選手としては無理」と思った瞬間「スポーツドクター」とひらめいたのです。おばあちゃん子だった私には、男きょうだいがみな医師となる中「女だから」という理由で許されなかった明治生まれの祖母の夢が刷り込まれていたのでしょう。
 

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診療では患者さんとゆっくり向き合う

大学5年のとき、日本水泳連盟の連携組織「日本水泳ドクター会議」を率いる武藤芳照先生(整形外科医・東京大学大学院身体教育学講座教授〔当時〕)とのご縁をいただき、進路の相談に乗ってもらった折、「スポーツに関わる老若男女をさまざまな角度からサポートするのがスポーツドクター。自分の興味のある科に進めばよい」とのアドバイスで、迷わず産婦人科を選択。スポーツを愛する寺川直樹前教授、原田省現教授のご理解で、母校・鳥取大学産婦人科に入局しました。

 

 

チームドクターとして国際大会にも同行
産婦人科医として最初に心を動かされたのは、望まない妊娠で人工妊娠中絶を選択せざるを得ない人、腫瘍で亡くなる人、子宮や卵巣を失う人、性感染症に苦しむ人、月経痛を我慢し子宮内膜症と診断される人など、多くの女性たちとの出会いでした。しかし彼女たちの苦しみ・哀しみの多くが、早期発見や予防ができたものであることが分かってきたときには、何とも言えないやるせなさを感じました。
入局3年目に進んだ大学院では生殖内分泌グループで「排卵機構」をテーマに与えられました。子宮内膜症研究で有名な研究室で地味なテーマだと思いましたが、これまで「出血」ばかり注目されてきた月経周期を「排卵」に注目して考えると分かりやすいと気付けたことは大きな収穫で、その後の講演や患者説明の方法に大きな変化をもたらしました。
研究と病棟業務、関連病院の当直の間、休日には日本水泳連盟の競技会のドーピング検査官や指導者研修会の講師、また2003年世界選手権(バルセロナ)や2006年アジア大会(ドーハ)にはチームドクターとして同行する機会もいただきました。
大学院を修了して2004年秋に上京。前述の武藤研究室で「身体教育学」を学ぶと同時に、対馬ルリ子先生のウィミンズ・ウェルネス銀座クリニックなどで女性医療や外来診療のノウハウを教えていただきました。

 

無月経など、女性アスリートの現状を憂慮

スポーツ界を見渡してみると、過度なトレーニングによる女性アスリートの三徴(無月経、骨粗鬆症、エネルギー不足)が明らかになっているにも関わらず、「月経が止まるほど練習して一人前」と公言する指導者や「月経がないほうが楽」と放置する女子選手がいまだに存在する一方、女子選手の月経周期を確認したところ「セクハラ」と言われた男性指導者や、せっかく産婦人科を受診しても「無月経で当たり前。ドーピング検査があるからホルモン剤は使えない」と治療してもらえない選手もいるという現状も見えてきました。
また、水泳など体脂肪が比較的保たれている競技では、無月経にならない代わりに月経痛やPMSに悩み、それでも我慢し続けて子宮内膜症を発症している選手や、選手寿命が延びたおかげで妊娠出産のタイミングに悩む選手も出てきています。

 

「かかりつけ産婦人科医」を目指して
女性アスリートを取り巻く現状は、現代女性の縮図そのものなのです。
トップアスリートの診療に憧れてスポーツドクターとなった私ですが、このようなさまざまな経験から「全ての女性にかかりつけ産婦人科医がいて、自分の体のことをよく知り対処できるのが当たり前な世の中」にすることが自分の夢になりました。
患者さんとゆっくり向かい合うかかりつけ医になることをモットーに、江戸情緒の残る街、人形町の小さなクリニックを拠点として、夢を実現させていきたいと思っています。

 

【略歴】
1970年宮崎県生まれ。96年鳥取大学卒、同大産婦人科学教室入局。2002年同大学院修了、関連病院での勤務を経て04年から東京大学大学院身体教育学講座博士取得後研究員、ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニックなどで勤務し、10年4月より現職。

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