<35>松隈産婦人科クリニック(福岡県小郡市) 松隈 孝則
松隈 孝則 |
産婦人科医による性の健康教育~私のキーワードはこれだ! その35
自分をたいせつに、他の人をもっとたいせつに
松隈産婦人科クリニック(福岡県小郡市)
松隈 孝則
性教育との出会い
人口約7万人の私の町には、中学校が6校あり、この6校全ての中学3年生に、思春期教育を行っています。
私が行っている講話の柱は、①自分をたいせつに生きよう②Hするってどういうこと―の二つです。
それでは、私の性格や得意とすることはといえば、性格は真面目で、几帳面。根性があり、何事も投げ出さない。そんな性格にぴったりの活動とは?...と今も自問自答しています。
自分をたいせつに生きよう
思春期においては、自分自身の体に気を付けて、変調があれば、恥ずかしがらずに専門家に相談することが大切です。自分だけで悩まないことが重要です。
男女とも、将来はパートナーと巡り合って、父親・母親になることが考えられるのですから、そのためにも、心も体も大切にしなければいけません。
私は講話の中で、「あなたは世界に一つしかない命なのです。そして、パートナーである相手の方も世界に一つしかない命の持ち主なのです」とメッセージを伝えています。
Hするってどういうこと
Hするってどういうことでしょうか。学生たちは、「そんなこと、知ってるよ!」と言うかもしれません。しかし、Hという行為の結果、どのようなことが起こり得るのかを産婦人科医師の立場からお話しします。
「今日のお話は、今すぐ役に立つことではないかもしれませんが、いずれ近い将来には役に立つことでしょう。その時に判断の材料の一つとして、思い出してください」と未来のことを描きながら話を進めます。
Hすることで、二人の心が充実してより仲良くなり、お互いを尊重し合える交際の結果、結婚へ、というコースを進めば最良かもしれません。
ところが、逆の結果を招くことも考えられます。自分自身の、そして相手の心や体も傷つけることになり、離反することもあり得ます。
また、妊娠することがあるかもしれません。妊娠した時点で、果たして、父親・母親になれる状況であるかを冷静に判断しなければいけません。親になれそうにもない状況で妊娠してしまったときには、どのように解決すればよいでしょうか。
性感染症にかかることもあります。性感染症は、早期に気付き、治療が完遂すれば、ほとんどの病気が後遺症を心配しなくてもいいものです。しかし、病気が進行した場合、将来妊娠が難しい状況になることもあります。
Hした結果については男女ともに、責任を逃れることはできません。
地域におけるネットワーク
2002~04年の3年間、小郡市が福岡県におけるエイズ教育推進地域の指定を受けました。この間、毎月1回の実行委員会が開催され、指定校として選ばれた小郡高校、三国中学校、三国小学校の校長、教頭、教務主任、養護教諭、および教育委員会などの行政スタッフ、合わせて約30名の会合を持ちました。
実行委員会としての役割を終え解散、というときに、有志により、せっかく培ったこのつながりをネットワークとして継続できたら、という声が上がりました。私自身が事務局長として手を挙げて、「おごおり思春期教育懇話会」を立ち上げました。毎年自主参加での研修会を開催して15年になります。2年前より、教育委員会の後援が得られています。
前述したように、私が思春期教育を担当している町は、人口が約7万人の小さな地域で、首長はもとより、教育長や教育委員会などの行政部門と、校長をはじめ、教頭、教務主任、養護教諭の教育機関部門が一堂に会して講師の話に耳を傾けます。
その後は当日の招聘講師も参加しての懇親会で、会話が弾みます。まさに「養護教諭と教育長が隣席できる懇親会!」なのです。
これからも、この小さな地域ゆえの特性を生かしながら、思春期教育へ関わっていきたいと思っています。
松隈氏の性教育講演風景
【今月の人】 松隈 孝則
1975年、久留米大学医学部卒。86年、小郡市で開業して以来、福岡県立小郡高校で性教育をスタートして、地域での思春期教育に取り組んでいる。おごおり思春期教育懇話会主宰、九州思春期研究会理事。