<31>ゆいクリニック(沖縄県沖縄市) 島袋 史
島袋 史 |
産婦人科医による性の健康教育~私のキーワードはこれだ! その31
女性のリプロダクティブ・ライツのサポート
ゆいクリニック(沖縄県沖縄市)
島袋 史
産婦人科診療所の開業
2011年にゆいクリニックを開業してからもう6年になります。自然なお産と母子早期接触、母乳育児をサポートしたいという思いでクリニックを開業しました。それと同時に、禁煙外来や望まない妊娠や避妊のサポートも始めました。
以前、育児期間中に診療所で外来のみで働いた際には中絶手術にも関わっていました。そのときには、術後の避妊指導を含めて中絶手術を受ける方のサポートが十分にできていないと感じていました。そこで開業してからは、病院ではできなかった、さまざまな種類のOC、LEPやIUDなどをそろえて避妊指導にも力を入れています。
望まない妊娠をした方へのカウンセリング
当院では、カウンセラーの先生方に週3日、中絶を希望される方や当院で出産予定の妊娠中の方と面談をしていただいています。特に、望まない妊娠を主訴に受診した方には、手術前の面談を必須としています。妊娠を継続する場合もしない場合も、その選択を支持するようお話をしています。
中絶を希望されている方には、女性が「よりつらい選択をして苦しむ」ことを、少しでも楽にするために、自分の本音が違っているとしても、「中絶しても問題ありませんよ」と"言い切ってあげること"を役割としています。そして、①後悔しない②自分を責めない③子どもは決して母をうらまない④今回のことで、なおさら幸せになる努力をすること―を伝えます。
さらに、手術後に心が揺れたりふさいだりするときは、①ぐずぐず悩んでいる時間は何の役にも立たないので、それよりは、具体的に体を動かして時間を過ごすようにすること②不幸な時間を長引かせないこと(問題は必ず解決されます)③今回の出来事で、最も大切なことは、「あなたが母になった」ということ④永遠にこの子の母であるという事実を誇りにして尊ぶこと⑤産む・産まないにかかわらず、女性として母としては同格であり、今回、産まないことを決めた自分を卑下しないこと⑥一番つらい思いをしているのはあなただとねぎらうこと―などをカウンセラーの先生から伝えてもらうようにしています。
中絶術後のアンケートでは、たくさんの人が、カウンセリングを受けたことで心が楽になった、助けられたと感じていると書かれています。
リプロダクティブ・ライツへの理解
当院で人工妊娠中絶を行うに当たり、スタッフからは中絶に立ち会うことがつらいという声も聞かれました。そんな折にスタッフが、「指導者のための避妊と性感染症予防セミナー」を受講したところ、リプロダクティブ・ライツを理解することができ、中絶に関して否定的に捉えず、中絶の問診や説明で患者さんに寄り添った対応ができるようになり、スタッフのストレスも軽減されたとのことです。
手術後には、より確実な避妊方法を伝える必要があるため、メインスタッフは日々避妊の知識を学び、患者さんへの指導がしっかりできるようにしています。
性教育への関わり
私自身は、現在、性教育講演を思うように行うことができていません。それでも、クリニックで性教育に関するセミナーを開催するなど、できるだけ性教育に関わっていけるようにしています
昨年は、周産期疾患についての講義を受け持っている看護学校で、初めて性教育の講義を行いました。初めてということもあって、十分に伝えきれない部分もあったと思いますが、学生たちの感想の中には、この講義が心に残ったという声もいくつか見られました。将来看護師になる学生さんたちに性教育についての意識を身に付けてもらえるよう、今後も続けていきたいと思っています。
診察室で患者の相談を聞く島袋氏
【今月の人】 島袋 史
1995年、琉球大学医学部医学科卒。96年、琉球大学産婦人科医局入局。大学附属病院および県内関連病院に勤務。2005年6月より浦添総合病院勤務。11年、小児科医の夫と共にゆいクリニック開業。