<6>前進あるのみ 咲江レディスクリニック(愛知県名古屋市) 丹羽咲江
丹羽 咲江 |
産婦人科医による性の健康教育~私のキーワードはこれだ! その6
前進あるのみ
咲江レディスクリニック(愛知県名古屋市) 丹羽 咲江
多くの子どもたちに
名古屋市で産婦人科クリニックを2002年に開設して13年経過しました。クリニックを開設して感じたことは、婦人科受診のタイミングがあまりにも遅く、性に対する正しい知識が乏しいということです。
性のトラブル(特に予期しない妊娠)の多くは、悲しい結末に終わります。「正しい性の知識やパートナーとの対等な関係性について、より若い年齢で知り、自分の将来の家庭や生き方を見据えた上で、自分の生き方を自分で決めることの大切さを子どもたちに伝えたい」と思うようになり、中学校や高校、大学での性教育を行うようになりました。しかし、診療の傍ら行う性教育には時間の限界があります。より多くの子どもたちに正しい性の知識を伝えたい。性教育を受けたときにはなるほどと思っても、忘れてしまうかもしれない。そして、私が一番伝えたいと思っている子どもが、学校に来られない状態であれば、私の思いや知識を伝えることはできない。本や紙の資料ではなかなか読んでもらえないかもしれない。そんな思いで性教育用のDVD「からだと心のヒミツ」を作成しました。
映像での性教育
堅苦しいものではなく、子どもたちがつい見てしまうような内容にするために楽しいイラストを使い、性感染症、妊娠、月経不順、月経痛、情報とトラブル、デートDV、セクシュアル・マイノリティーの項目に分けて、必要と思われる項目を選択して集団教室や個別で指導することができるようにしました。
このDVDは、ぜひ親にも見てもらいたいと考えています。性に関する正しい知識は、残念ながら親もあまり持っていないのが現状です。正しい知識を持たずに感情的に子どもに性のトラブルを禁止するのではなく、親も正しい知識を持って理性的に子どもと「なぜそれがいけないのか」を話し合えるようにと願い、クリニックでは、家で親子で見て、話し合ってもらうという試みも行っています。唐突に性の話をするには抵抗があっても、動画を見れば、それを題材に話し合うこともできます。
今回さらに「女のからだと心のヒミツ」というDVDも作成しました。こちらは大人にも見てもらうために作成しました。不妊症、更年期障害、性感染症、予期しない妊娠。これらを予防し症状を悪化させないためにはパートナーの理解が不可欠です。しかし実際には、パートナーに自分の体調やその原因を正しく伝えられず、理解を得られていないのが現状です。男性パートナーに女性の体について正しく理解してもらうために作成しました。
よくあるパートナー同士のトラブルを各々のシーンでドラマにして、その後に短くて分かりやすい医学的な解説を入れました。また、女性が自分の思いを伝えるためのコミュニケーションスキルについても解説を入れています。
このDVDを自宅に持ち帰っていただきパートナーとともに見て、内容について話し合うという場合にも使いますが、性のトラブルや付き合い方に問題がありそうな子どもにドラマを見てもらって、ドラマの中のカップルの何が問題なのかを考えてもらうといった使い方もしています。
前向きに、楽しく
性に関しては、不安な気持ちでセックスをしていても、そのとき、それに対して適切な対処をすることは少なく、多くの人は何かトラブルが発生してから「どうしよう?」ととまどい、受診されます。
性の健康教育にはさまざまな方法があると思います。前向きに、楽しく、前進あるのみ。自分スタイルで性の健康教育にお役に立てればと考えています。
診療の傍らの性教育に限界を感じ映像教材を制作
内容に関する問い合わせなどは、咲江レディスクリニックまで
TEL:052-757-0222 または MAIL:eikas@nifty.com
【今月の人】 丹羽 咲江
1991年3月、名古屋市立大学医学部卒業。同年5月、国立名古屋病院勤務(現名古屋医療センター)。1996年4月、名古屋市立城北病院勤務(現名古屋市立西部医療センター)。2002年1月、咲江レディスクリニックを開院。