機関紙

<4>情熱、つながり 大隈レディースクリニック(佐賀県杵島郡) 大隈良成

2015年07月 公開
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大隈 良成
産婦人科医による性の健康教育~私のキーワードはこれだ! その4

情熱、つながり



大隈レディースクリニック(佐賀県杵島郡) 大隈 良成



これは危ない!

 私の性の健康教育へのキーワードは「情熱」と「つながり」である。
 1998年頃、若年者を中心にクラミジア感染症が拡散し始めた。当院でも代の患者さんをアトランダムに調べてみたところ、約30%に陽性者が出た。都会だけでなく佐賀県のような田舎でも感染が広がっている事実を知り、「これは危ない!」「正しい知識を伝えなければ子どもたちが危ない!」と思った。それが私の性教育への原点である。
 まずは自分から講演させてくれる高校を探してお話しさせてもらった。当院はお産も扱っているため、講演に行くためには大学病院に留守番医を頼まなければならない。損得で考えれば割に合わない話であるが「伝えたい」という思いの方が勝った。


中絶率ワースト1位

 そうした中、ちょうどこの頃全国的に代の人工妊娠中絶が高くなっていることが問題となり(2001年最高となる)、学校現場や保護者から講演依頼が徐々に増えていった。そして06年、わが佐賀県で代の中絶率がワースト1位になるに至って、性教育は一気に注目を集めることとなった。
 こうして医療現場や養護教諭からは性教育の大切さが叫ばれる中、一方において全国的には性教育バッシングも広がっていた。この頃より県内の性教育に関心のある仲間が集まって、情報交換する場を設けた。学校現場の養護教諭、保健師、助産師、看護師、行政、僧侶、医師など、さまざまな分野の人が集まり語り合った。
 私は積極的にいろいろな異業種の方をつないでいった。そして語り合う中から、自分たちが目指している方向に間違いがないことを確認し合った。こうしたつながりは、現在の思春期ネットワーク佐賀(SNS)へと発展している。
 また06年からは全国組織「避妊教育ネットワーク」に参加させてもらった。ここでは全国の性教育に熱い思いをもった仲間と知り合うことができた。情熱を持ちいろいろな地域、さまざまな分野で頑張っている仲間と会えることで勇気をもらえた。こうした仲間とのつながりの中から、私たち自身がまずエンパワーメントしてもらい、その元気を各地域で、各分野で伝えていくといった感じである。


医師・行政・学校がスクラム

 佐賀県では09年に県庁内に「性の健康問題対策会議」が立ち上げられ、行政各課(母子保健課、体育保健課、学校教育課、こども未来課、健康増進課、社会教育・文化財課)、医師会、看護協会、佐賀大学、男女共同参画センター、DV総合対策センター、保健福祉事務所など、縦割り行政の枠を超えた会議が持たれ、「佐賀の子どもたちを守っていかねば」という一点において一致した。
 そして医師会、行政、学校現場がスクラムを組んで、話を進め、表のようなシステムが実働している。これもさまざまな組織のつながりの中からできたことである。
 性教育は単に狭義の性の知識を伝える場だけでなく、人間教育でもありまた昨今のコミュニケーションが苦手な若者たちにとっては、コミュニケーションスキルを伝える大切な場でもある。しかし現状は残念ながら、性教育は教育界でも医師会でもまだまだマイノリティである。でもきっと、私たちに追い風が吹く日が来ると思う。その日を信じて皆さんとの「つながり」を大切に、「情熱」を持って活動を続けていきたい。

1507-8-p1.jpg中学校での講義



【今月の人】 大隈 良成

1955年生まれ。1980年、福岡大医学部卒。同年九州大産婦人科学教室入局後、佐賀県立病院にて研修。1982年、佐賀医大産婦人科学教室入局。佐賀医大助手。1992年より大隈レディースクリニック。1999年より佐賀県内で性教育を始めた。

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