労働者健康安全機構大阪産業保健総合支援センター
鈴木純子
本連載では現在「職域保健における地方・地域」をテーマに、さまざまなエリアの特徴と、そこでの取り組みについてご紹介しています。3回目となる今号では、大阪産業保健総合支援センターの鈴木純子さんにご寄稿いただきました。
(編集部)
魅力と負の部分が混在する街「大阪」
大阪といえば、「たこ焼き」「お好み焼き」「お笑い」「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」「グリコの看板」と、コテコテのイメージでしょうか。実は大阪は、中小企業数が東京に次いで多く、日本一、世界一のものづくりをしている町としても認知されています。
大阪は「安い」「うまい」「おもろい」「ディープ」といった魅力にあふれる一方、結核罹患率、生活保護受給世帯数、重要犯罪認知件数が全国ワースト1位という、うれしくないデータもあります。
そんな大阪府で産業保健に携わる方々をサポートするのが、大阪産業保健総合支援センター(以下、大阪産保)です。私はここで、本年4月から相談員として活動しています。
産業保健総合支援センターとは
「独立行政法人労働者健康安全機構産業保健総合支援センター」(以下、産保)は産業医、産業看護職、衛生管理者等の産業保健関係者を支援し、事業主等に対して職場の健康管理への啓発を行うことを目的に、各都道府県に1か所ずつ設置されています。大阪産保はその中の一つです。
産保の主な業務とは、①窓口相談・実施相談②研修③情報の提供④広報・啓発⑤調査研究⑥地域窓口(地域産業保健センター)の運営―です。
大阪産保での役割
大阪産保には産業医学、労働衛生工学、メンタルヘルス・カウンセリング、保健指導と、それぞれの分野の相談員が籍を置いています。ここでの私の役割は、保健指導相談員として、現場の産業保健スタッフや、人事・労務担当者からの相談に対応することです。
また、産業看護職向けの研修も担当しています。先日、産業保健経験が3年前後の看護職を対象に、メンタル不調者の対応についての研修会を開催しました。「メンタル不調者に必要な支援は何か」「企業から求められる実績や結果は何か」といったテーマに対し、実際の経験を参加者同士で話し合い、新たな問題や課題、解決策を一緒に考え、全員で共有していく、グループワーク中心の研修です。
一人職場で働いている産業看護職はスキル育成の機会も少なく、労働衛生の基本的な知識や情報も得にくくなりがちです。相談できる同僚や先輩もいないため、問題を一人で抱えてしまいやすくもなります。
研修に参加する機会の少ない一人職場の看護職のために、必要な研修を今後も継続していこうと思っています。初任者、中堅、管理者など、それぞれのレベルに合わせて実施していくとともに、研修で知り合った参加者同士の輪を広げていく交流の場としても展開していきたいです。
外資系企業の経験から学んだこと
昨年末までの31年間、私は大阪市内の外資系企業で産業保健師として働いていました。そこでは保健師1人と常勤産業医1人で、静岡以西、九州までの約3千人をサポートしていました。
業務内容は、定期健診の事後措置、長時間勤務者への面接、休職者の復職支援、メンタルヘルス活動、職場巡視、健康相談ほか、外資系企業ならではの業務も加わり非常に多岐にわたります。産業保健の専門家としては納得のいかない業務もあり、日々葛藤していました。
また、少ないスタッフでどのように展開していくかも、大きな課題でした。システム構築や業務の見直し・効率化もおのずと業務に入ってきます。国内企業と一風異なる外資系企業での経験を通し、保健師という立場だけでなく、企業人としての仕事の進め方やリスクマネジメント、ものの見方を学ぶことができました。
役割が変わっても学びは尽きない
長い間、現場の第一線で活動してきましたが、現在の職場では、前線で活動する産業保健スタッフをサポートする側へと役割が変わりました。
同じ産業保健活動といっても、業種や企業規模、経営者の理念、外資系か否かなどで、業務の優先順位や内容が大きく変わります。サポートするに当たっては、それらのバックグラウンドを十分理解した上で、ニーズに合った対応をしていくことが求められます。私も現場の産業看護職との関わりを通して、これからもたくさんのことを学ばせていただこうと考えています。