岡村氏 |
心身一如の東洋医学の視点から
~元気が広がる生・性教育~
ネットワークへの参加
薬学部を卒業した後、企業で新薬の研究の仕事をいたしました。役に立つ新しいものを作る仕事は楽しいものでしたが、人が大好きな私は、直接人とつながる仕事に就きたいと医者になりました。女性であることが役に立ち、「おめでとう」と命の誕生の援助をできる産婦人科を選択しました。人類の繁栄の原点である女性に寄り添える仕事に就くことができて光栄に思っております。
友部中学の先生方と |
7年半勤めた茨城日立総合病院は、地域中核病院でした。そこで自分の力量以上の患者さんに出会い、日本思春期学会に発表して助けを求めたとき、避妊教育ネットワークの先生方がアドバイスと励ましをくださり、がんばるパワーをいただきました。その子は、親が娘に無関心な子宮外妊娠の中学生でした。その後、ネットワークに入会。少しでも傷つく少女たちが減ればと、それまで以上に性教育の重要性を感じ、勉強させていただきながら、茨城県北を中心に、中高等学校で講演をいたしました。
東洋医学との出合い
同時期に、西洋医学では症状が軽快しない患者さんと出会い、漢方の勉強を始めました。女性の全てのライフステージに、西洋と東洋の視点を取り入れる(洋漢統合医療)という診療スタイルの原点となりました。その後、北京に転居し、中国人コミュニティーでの生活や北京中医薬大学で研修ができたことは、自分の考え方や人生を大きく変える経験となりました。自ら作る健康の大切さと中国人の元気でタフな生き方を学びました。
元気の広がる生・性教育
私の講演は、命の大切さを伝え、望まない妊娠、性感染症の予防を目的に正確な知識をお伝えすることが柱です。「今日はおせっかいとお願いに来た」とスタートし、「今日勉強した内容を皆さんが台風の目となって周りの友達にどんどん伝えて」「望まない妊娠や感染症を蔓延させるのではなく、いい男いい女を広げる原動力になって」と子どもたちに使命を与え、「皆さん一人一人が望む人生を送れるようにおせっかいを焼きます」と伝えます。子どもたち、先生方、親御さん、そして私自身が元気になるような講演が私のスタンスです。
人の命は宝であり、存在は奇跡です。宝の命をより輝かせて生きてほしい。奇跡の命を持つ自分と仲間を大事にして、奇跡の命をつなげていってほしい。性は大切ですてきなもの、すてきな性が実行できる幸せな大人になってほしい。それは素晴らしい人生そのものです。そのためにも「正確な知識を持ちましょう」「すてきな恋をしましょう」と伝えています。
笠間市立友部中学校では、校長先生はじめ先生方が一丸となり、子どもたちの元気とやる気を伸ばす教育をされています。美術の先生と生徒が作ったゆるキャラのブロッさん君も大活躍です。美浦村立美浦中学校では、全校生徒とPTAが参加する講演会を企画いただきました。生・性教育は子どもたちの元気と幸せを呼ぶための必須の教育です。理解のある先生方が子どもたちを導きます。
過剰な枠組みや決め事は、時にチャレンジ精神や元気を奪います。怖いから異性には近づかないという大人になってほしくありません。私は性行動の停滞化を深刻に捉えています。症例や性感染症は子どもたちにはインパクトのあるものです。行動が萎縮することのないよう注意しています。「話すことは脅しではなく、すてきな恋をするために必要な知識」「知って自分で考えてほしい」と自己決定の重要性を説きます。それは性だけではなく、生きるのに必要な基本姿勢だからです。元気や希望が膨らむようお話しします。
生・性教育から考えたこと
人は生きる力を失ったときも、たった一人の理解者に助けられることがあります。私の講演が、さまざまなバックグラウンドを持つ子どもたちの元気の一助になればと思います。
漢方薬はいくつかの生薬が組み合わさり、効果が倍増します。生・性教育においても同様で、子どもたち、PTA、教育・保健・医療関係者が手をつなぐことによって生まれるパワーは絶大だと思います。
繁栄の原点は人です。人に寄り添い、人とつながり、皆で元気になりたい。微力ながら産婦人科医としてそのお手伝いを継続できればと願っております。私に元気を与えてくれる、仲間の皆さまに感謝いたします。
【略歴】
1986年東邦大学薬学部卒業、㈱日立化成工業勤務、島根大学医学部卒業。1997年東京大学産婦人科学教室入局。茨城日立総合病院等勤務。2008年北京中医薬大学研修。現在、つくばセントラル病院勤務。東邦大学大学院看護学研究科非常勤講師、東邦大学薬学部訪問研究員、日本の元気を食事から考える会TKC料理同好会副代表。