対馬 ルリ子 |
知識をもって予防する 自分の人生は自分で選ぶ
対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座(東京都中央区) 対馬 ルリ子
開業までの思い
大学卒業後15年目の1999年、私は都立病院に勤務している普通の産婦人科医でした。
その年は、低用量ピルの認可と、都立病院周産期センターの立ち上げと、長女の中学受験が重なり、特に忙しい年でした。次々に押し寄せる救急車、ピル取材の申し込み、原稿書きなどに翻弄されて(娘の勉強は主婦の友人がみてくれていました)眠る暇もなくなり、突発性難聴と耳鳴りに悩まされながら、「これでは駄目だ。このままでは悲しい思いをする女の子は減らない。妊娠前からちゃんと知ってもらわなければ」と考えていたのです。
そして2002年、私は、銀座の路地裏のビルの4階に、都会の女性の保健室「ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック」を開業しました。キーワードは、「知識をもって予防する。自分の人生は自分で選ぶ」です。
アフリカと日本の子
その頃、黒柳徹子さんの「徹子の部屋」に性教育・性感染症予防の話題で出演させてもらう機会がありました。
彼女は、「アフリカの子どもたちなどは、今日のごはんのためにやむなく体を売ってエイズに感染してしまうでしょ。それに引き換え日本の子どもたちはちゃんとごはんを食べられるのに、なんでわざわざ危険なことをするの」と聞いてきました。
「それは、何が危険か知らないからです。何の武器も持たずに戦場をさまよっている点では、日本の子どもたちも同じかもしれません」と私は答えました。「そう! そうね。子どもたちに大事なことを教えるのは、大人の責任ね!」と彼女は言いました。
どんな人生も実現できる
私は、04年に、種部恭子先生、吉野一枝先生と共著で、「ティーンズの生理&からだ&ココロの本」を出しました。この本の帯には、「どんな、なりたい自分にもなれる! 知識はそのための武器。知識をもって夢を実現することこそ、かっこいい!」と書いてあります。
その前年、カナダ・バンクーバーの女性病院を視察した私たちは、ティーンエージャーのための性の健康クリニック、東洋人女性のための検診啓発プログラム、LGBTのための健康相談など、当事者中心の啓発活動と連携して病院が運営されているのを見て、帰りの機内で「よし、まず3人で本を出そう!」と決めたのです。
そして月日が流れ、私は今も診療の合間を縫って年間50~60講演を引き受けています。学校での教育講演は、女子高や地元の高校・大学が主です。最近は、会社の健康保険組合やダイバーシティ推進室などに頼まれて、女子社員や管理職にお話をさせてもらうことも多くなりました。
体が大人でも、性の知識や意識はまだまだ未熟なのが日本人です。それは、これまで大人が家庭や学校でちゃんと伝えてこなかったことや、新しい医学的知識がたくさんあるからです。産婦人科医から、子どもたちばかりでなく、たくさんの大人にも伝えたいと思います。「知識をもって健康を実現しましょう。どんな自分にもなれ、どんな人生もあなたは実現できる。知識はそのための武器であり応援団です」と。
対馬氏の講義風景
【今月の人】 対馬 ルリ子
1984年弘前大学医学部卒業。東京大学医学部付属病院研修医、東京大学産婦人科学教室助手を経て、都立墨東病院周産期センター産婦人科医長。2002年ウィミンズ・ウェルネス銀座クリニック開院、03年女性医療ネットワーク設立。女性の生涯にわたる健康の実現に向けて診療・啓発・支援に奮闘中。