メニュー ホーム 検索 PCサイトへ
一般社団法人 日本家族計画協会

機関紙

2011年度(2012年更新)

2012年06月 公開

日本家族計画協会 家族計画研究センター・クリニック  2011年度事業報告

本会家族計画研究センター所長 北村 邦夫

 本会家族計画研究センター・クリニックの2011年度の活動を報告する。 

緊急避妊薬の適正使用に向けた取り組み
 悲願であった緊急避妊薬『ノルレボ錠0・75㎎』(成分レボノルゲストレル)が2011年2月23日に承認、5月24日に発売された。長年にわたって、緊急避妊薬の正式承認を求めてきた私どもとしては、世界の仲間入りができた安堵とともに、大きな責任を感じずにはおれない。

 承認後3月4日付、厚生労働省医薬食品局審査管理課長から本会会長宛に「『ノルレボ錠0・75㎎』の適正使用への協力依頼について」の課長通知が届くなど、新薬としては異例の扱いとなっている。

 これを受けて、当センターでは、日本産科婦人科学会および日本産婦人科医会の後援を得て、日本産科婦人科学会編「緊急避妊法の適正使用に関する指針」(2011年2月)の解説を中心に医師とコメディカルを対象とした「緊急避妊法適正使用セミナー」を全国8か所で開催、延べ1544人が参加した(図1)。
 

     
     
  図1 緊急避妊法適正使用セミナー
 
 
     
  図2 啓発資材
 
 

さらに、一般女性向けパンフレットを作成し全国の学校・市町村保健センター・女性相談センターなどに配布。緊急避妊薬を処方された女性を対象には、一般女性と犯罪被害者向けポケット版リーフレットを作成して全国の医療機関に配布した(図2)。また、全国の医療機関調査を経て、「Dr北村が推奨する緊急避妊薬を処方している施設の検索サイト」を制作するにあたり1500余施設が登録された。
 当センターには合計654件の緊急避妊相談が寄せられ、クリニックには緊急避妊法を求めて33人が訪れている。

SRHセミナーには1362人が参加
 当センターが中心となって開催しているセミナーのひとつがSRHセミナー。毎年全国各地で開催している「指導者のための避妊と性感染症予防セミナー」は、2011年度からは装いも新たにSRHセミナーと銘打ったセミナーを立ち上げた。SRHとはセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの略語。折しも国際家族計画連盟の「新版IPPFセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス用語集」(日本語版監修=芦野由利子・北村邦夫、登録用語数約680語)が出版されたばかりでもあり、国際的に広く認知されているSRHを、日本でも親しめる言葉にしたいという主催者の願いがあった。テーマは「新しい話題を性教育の中でどう教えるか」。「新しい話題」とはSRHの中でも関心が高まっているHPVワクチン、緊急避妊薬、そしてわが国での普及が続いている低用量経口避妊薬、さらには月経困難症治療剤として保険適用のある低用量ホルモン剤などのことを指す。

 全国8か所で開催したSRHセミナーは例年通り、日本助産師会、全国助産師教育協議会の後援ならびにあすか製薬(株)、MSD(株)、科研製薬(株)、ジェクス(株)、(株)そーせい、バイエル薬品(株)、富士製薬工業(株)、持田製薬(株)からの事業協賛を得ており、参加者総数は1362人を数えた。なお、本年7月には当該セミナー100回記念大会が計画されている。

OC関連の電話相談件数は8319件

当センターでは2005年2月からバイエル薬品(株)の支援のもと「OCサポートコール」を、2010年4月にはあすか製薬(株)とともに「OCコール」を開設して現在に至っている。ちなみに、2012年3月までに受けた相談延べ件数は、前者が3万9327件、後者が1536件となっている。集計方法が異なるので、二つを単純に統合することはできないが、結果を対比させることによって、OC相談の特徴を明らかにしたい(表1)。

 年齢分布を見ると、前者の場合「35歳以上」が最多で32・3%、次いで「25~29歳」25・1%、「30~34歳」19・5%の順。後者は「25~29歳」が最も多く27・8%、「35歳以上」26・7%、「30~34歳」21・7%と続く。相談内容で10%を超えているのは、前者と後者で並べると「飲み忘れた場合の対処」が20・6%、18・3%、「服用方法」19・3%、20・6%、「副作用」14・7%、10・1%、「薬物相互作用」10・1%、13・1%であり、上位は共通している。後者の場合、緊急避妊薬『ノルレボ錠』の相談項目が4・2%となっている。

 これだけ多数の相談内容が収集されると、わが国でOCを服用している女性がどのようなことに悩んでいるかが一目瞭然であり、これらの疑問に的確な回答が向けられ、服用者の不安が軽減されるならば、OCの普及を加速させることになり、当センターの役割の大きさと責任を実感している。

「思春期・FPホットライン」相談件数減少
 

   
表1 OC関連電話相談実績(年齢と相談内容)  
 
   
 
   
 

 1982年に開設した「思春期・FPホットライン」はわが国の有数の歴史ある電話相談であるが、利用件数は2581件(男性1321件、女性1260件)と減少傾向にある(図3)。筆者が現職に着任した1988年からデータベースを整えているが、延べ相談件数は12万7451件(男性7万5396件、女性5万2055件)を数えている。

 「思春期・FPホットライン」の存在をどこで知ったかをまとめたのが表2である。男女ともに「インターネット」が75%を超えている。インターネットの普及は「Yahoo知恵袋」に代表されるように、きめ細かな回答を得られるメリットはあるが、ベストアンサーの回答者のバックグラウンドが見えにくく、そのために必ずしも不安が解消されるわけではないことなどもあって、電話相談を求め続けるのではないだろうか。年々相談件数が減少してはいるものの、専門相談員と双方向のやりとりをするという従来からの相談システムは今後も必要とされていくのかも知れない。

 相談主訴をみると、従来同様男性の場合「包茎」23・5%、「自慰」19・2%、「性器」11・3%、「射精」10・1%など上位の悩みは変わらないものの、女性では「緊急避妊」48・3%、「妊娠不安」10・6%、「月経」7・4%、「避妊」6・7%などとなっている。

 「東京都・女性のための健康ホットライン」については532件。未婚274件、既婚252件。平均年齢は33・51歳とやや高め。35歳以上が全体の46・2%を占め、30歳以上とすると58・6%となっている。この年齢を反映してか、相談内容も「病気」22・0%、「月経」13・0%、「妊娠」10・9%、「更年期」9・0%などの順であった。

各種電話相談、相談者の平均年齢を計算

 「思春期・FPホットライン」「OCサポートコール」「OCコール」「東京都・不妊ホットライン」「東京都・女性のための健康ホットライン」と各種電話相談を開設しているが、今回はこれらの相談を利用する側の平均年齢を算出することとした(図4)。

東京都・不妊ホットライン
 1997年からスタートした「東京都・不妊ホットライン」は14年が経過した。2011年度の相談件数は422件で、1176件だった2000年度に比べて3分の1程度と減少している。その一方で、1件あたりの相談時間は平均26・7分(最大60分、最小1分)、相談者の年齢は35・8歳であった。相談内容(複数回答)のトップは「自分自身のこと」16・8%、次いで「治療への迷い」14・2%、「周囲との人間関係」13・5%、「不妊への不安」13・3%、「病院への不満」12・3%、「病院情報」10・7%、「夫とのこと」10・7%、「体外受精・顕微授精」10・0%などとなっている。

4価のHPVワクチン接種者は29人
 当センターが開発に協力した4価のHPVワクチン『ガーダシル』が2011年8月26日に発売。これはHPV6型、11型、16型、18型の感染に起因する子宮頸がんと合わせて尖圭コンジローマの予防に有効なワクチンである。当センターも、東京都新宿区指定の公費助成ワクチン接種施設として登録するとともに、公費助成対象外の女性に対しても接種を積極的に勧奨し、子宮頸部細胞診検査の推進に努めた。

 クリニック開設日数が週2回と少ない当センター・クリニックにおいても、ワクチン接種者は公費助成対象者6人を含む29人が『ガーダシル』の接種を開始している。

メニュー ホーム 検索 PCサイトへ