木村 美帆 |
さまざまな手法での情報発信
エナ大通クリニック(北海道札幌市)
木村 美帆
毎日の外来で出会う方のために
2011年、石狩市にある本院「エナレディースクリニック」の分院として、札幌市中心部のビル内に「エナ大通クリニック」が開院してから6年がたとうとしています。
私自身は、本院に加え、分院での勤務もするようになったことや、今現在の家庭状況もあり、性教育に関する対外的な活動があまりできない状態でいます。
しかしながら、性に関することやトラブルは毎日外来で耳にするため、そこで出会った方だけでも、何かしら受診してよかったと思ってもらいたい、修正できる情報があれば提供していきたい、という思いがありました。
一般外来診療の中でどこまで可能なのか、今も試行錯誤をしているところではありますが、当院で行っている対策を紹介したいと思います。
問診が鍵!
最近は、「お付き合いしている方がいますか?」と聞くより、「セックスする機会がありますか?」とダイレクトにさらっと聞くようにしています。パートナーがあってもセックスレスで悩んでいたり、不特定の相手だったりと、背景は実にさまざまです。
そんな中で、患者自身からは切り出しにくいことも、このちょっとした一言でいろいろな問題点を拾い上げられることが多いと感じています。感染症の注意喚起をすべきか、カウンセリングが必要かを振り分け、その人に合った情報提供をすることも、性に対する健康教育の一つと考えています。
医師ではないスタッフも活躍
医師ではないスタッフの存在も当院では大事なポイントです。
当院ではOC/LEPの処方に力を入れていて、正しく理解してもらった上で、安全な服用と長期継続につなげられるよう、開院当初より「ピル外来」を設けています。
ここでは助産師・看護師が担当していて、雰囲気がよいのか、医師ではないから話しやすいのか、患者の生の声を発掘できるのです。現場で実際に起きていることは、私たちの想像を超えることがたくさんあり、それに対し、ピルに関する誤った情報の修正・不安の解消のほか、性的なトラブルについての相談・必要な検査の提案などを可能な限り行っています。
エナエナももいろ相談室
どこに相談したらいいか分からないこと、婦人科の受診にまでは至らないが困っていることに応える窓口として、15年12月に、エナエナももいろ相談室を開設しました。
娘さんが月経不順で、パートナーがいるため妊娠していないかとても心配なママ。結婚後一度もセックスしたことがない夫婦。親に知られずに性感染症の相談をしたい学生。他院で処方されたピルの相談をしたい女性など、さまざまな方が相談にいらっしゃっています。
相談室では、ゆとりがあり、プライバシーが守られた空間で対応しています。相談者には受診前のワンステップと捉えてもらい、解決へつなぐための提案や、スペシャリストへのスムーズな連携などを行っています。
新ツールをどんどん生かして
「コンドームの2枚重ねが効果的」「月経中・月経不順だと妊娠しない」「コンドームを使用していれば、妊娠・性病は絶対ない」など、現場では間違った知識が横行しています。これまでホームページでの啓発も行ってきましたが、このたび新しく、正しい情報の拡散を目的とした動画サイト「ももちゃんTV(仮)」を開設する予定です。このように、さまざまなツールを使っての情報提供を、今後も続けていきたいと思っています。
スタッフによるピル外来風景
「エナエナももいろ相談室」の様子
【今月の人】 木村 美帆
2000年、札幌医科大学医学部卒。同年、札幌医科大学産婦人科医局入局。大学附属病院および道内各地方都市の関連病院に勤務。
07年よりエナレディースクリニック勤務。11年からエナ大通クリニック兼務。