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職域保健の現場から

職域保健の現場から<60>
高年労働者の健康管理・健康支援

第849号

株式会社ダイフク 人事総務本部人事総務部滋賀グループ 奥谷 さやか

 本連載では職域保健の現場で活躍されている方にさまざまな取り組みをご寄稿いただいています。今回は株式会社ダイフク人事総務本部人事総務部滋賀グループの奥谷さやかさんに、同社での高年労働者の健康管理や健康支援などについてご紹介いただきます。(編集部)

職場紹介

 株式会社ダイフクは、マテリアルハンドリングを核とする「モノを動かす技術」で、心豊かに生きられる社会の創造を目指す会社です。私が所属している滋賀事業所は、滋賀県の東側にある日野町の120万平方メートルの広大な敷地にあります。元々あった池がそのまま自然保護され、ハヤブサやカスミサンショウウオなど、50種類以上もの希少種が生息しています。このような豊かな自然に囲まれた事業所は、当社の主力製品である物流システム・機器の生産拠点であり、シェアでは世界最大級の規模を誇ります。約1,700人の社員が在籍し(2024年8月末現在)、1名の専属産業医と3名の保健師、2名のヘルスキーパー(あん摩マッサージ指圧師)が、従業員の健康をサポートしています。

健康課題(生活習慣・メンタル・喫煙)と健康支援

 健康を考える上では、滋賀事業所は公共交通機関によるアクセスが難しく、自動車通勤をする従業員が多いため、全年齢層で日常生活における活動量が少ないことがウイークポイントになっています。
 定期健康診断の結果を見ると、ダイフク全体の年齢層のボリュームは20歳代後半が最も多くなっていますが、中高年齢者に当たる50歳代前半も多く、有所見率を占める割合も50歳代が最も大きくなっています。年代別の有所見率は、年齢の上昇とともに高くなり、50歳代では約75%、60歳代では約86%の従業員が有所見となっています(図1)。有所見率の上昇はある年代から突然上昇するのではなく、20歳代から徐々に高くなってきていることから、今の30~40歳代の健康状態が良くなることで、20年先、30年先の高年齢労働者の有所見率を下げることができるのではないかと思っています。
 メンタルヘルスに関する保健師の取り組みとしては、入社・異動に伴ってストレスが高まりそうな時期を見計らい、保健師面談を実施しています。また、65歳を超えて雇用継続となる従業員に対しては、状況により更新のタイミングで面談を行うなど、健康診断の結果のみならず、就労環境やメンタル面にも気を配り安全に働き続けられるようフォローしています。
 2023年度の喫煙率は24.4%と決して低い数字ではありませんが、毎年多くの従業員が禁煙にチャレンジしていることが、健康診断の問診を経年で追うことで分かっています。そのような背景もあり、禁煙を後押しする施策として、卒煙プログラムの実施や、就業時間内に禁煙タイムを設けるなど禁煙を支援し、併せて受動喫煙による健康被害の低減も図っています。

図1 年代別有所見率
図1 年代別有所見率

健康支援の組織(こころと体の健康づくり委員会)と活動内容

 当社では従業員の心身の健康づくりについて、会社・産業医・保健師・健康保険組合・労働組合が連携して「こころと体の健康づくり委員会」を組織し、「事務局」と「分科会」で分担しています。事務局は全社員を対象にした施策を企画実施、分科会は主要拠点事業所が担当する地域の社員を対象に健康課題や地域資源に合った施策を行うなど、従業員がいきいきと働くことができる職場環境の整備に努めています。
 活動例として、事務局では、年齢に関連はないものの転倒災害が毎年のように発生し、転倒災害予防が課題に挙げられたことから、つまずきや転倒による怪我(けが)を未然に防止するため、今年度は全社員を対象とした「サルコペニアを予防しよう」と題したeラーニングを作成・実施しました。その他、スクリーニングなどで一定の基準に該当した人のうち、希望者に対し睡眠時無呼吸の簡易検査を実施することで、睡眠への関心を高め、より良い睡眠がとれるよう生活改善のきっかけをつくったり、治療につながることで健康リスクの低減に努めたりしています。
 滋賀事業所の分科会では、日常生活での活動量増加を目指し、滋賀事業所の中心にある“やすらぎ池”のほとりにある、やすらぎハウスを拠点とした「ランチウォーク」を毎月2回昼休みに開催しています(写真1)。歩行コースは各自で自由に設定でき、各職場からやすらぎハウスまでは約5分となっており、昼食後に軽い運動をする良いきっかけとなっています。

写真1 ランチウォークの1コマ
写真1 ランチウォークの1コマ

日々の保健師活動を通して思うこと

 全従業員の中で、多くの人数を占めている現在50歳代の従業員が働き続けることで、これから徐々に60歳代の人数が増えていくことが予想されます。この年代になると治療を受けている従業員も多く、今後も有所見者の割合は増えていくと思います。持病とうまく付き合い、いきいきと働く、それらを示すことができれば、若い世代の従業員が「ダイフクでの就労は健康的である」と感じられ、ワークエンゲージメントの向上につながる要素にもなると思います。私は、「産業保健師の役割は、従業員の個々の健康を支えるのみならず、会社の将来を支える縁の下の力持ちのような役割」であると思っています。これらを直接感じることができることが産業保健師の醍醐味(だいごみ)だと感じながら、これからも日々健康のサポートに取り組んでいきたいと思います。



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