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職域保健の現場から

職域保健の現場から<49>
高知県の事業所支援から見えてきているもの
~高知産業保健総合支援センター 保健師として~

第812号

独立行政法人労働者健康安全機構 高知産業保健総合支援センター 産業保健専門職(保健師) 豊田あさみ

 本連載では、職域保健の現場で活躍されている方にさまざまな取り組みをご寄稿いただいています。前回より、高知県における産業保健活動の取り組みの現状とその課題についてシリーズでお届けしております。
 今月は、高知県中西部における小規模事業場での産業保健活動の取り組みについて、高知産業保健総合支援センターの豊田あさみさんにご紹介いただきます。 (編集部)

 高知産業保健総合支援センターの保健師として4年目を迎えています。私の産業保健の活動は、地域の窓口である地域産業保健センター(地産保)の事業場訪問からスタートし、現在も地産保スタッフを支援する立場として小規模事業所の支援に関わっています。今回は中西部に位置する須崎地域産業保健センターの活動で見えてきた事業場支援の在り方についてご紹介します。

須崎地域産業保健センターの体制

 須崎地域産業保健センターは、須崎市と仁淀川・四万十流域の海・山・川の自然豊かな10の市町村を受け持ちエリアとして小規模事業場向けのサービスを行っています。
 2021年10月時点で、コーディネーター1名、登録産業医18名、登録保健師3名の体制をとっています。産保の保健師は、登録保健師のピンチヒッターとして労働者に対する保健指導、事業主の相談対応、安全大会講師など、月に1~2回程度小規模事業場に伺います。また、登録産業医は旧市町村単位で委嘱ができており、地域に密着した事業場支援ができることも当地産保の強みです。

図表1 須崎地域産業保健センターの体制
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小規模事業場労働者の健康課題

 受け持ちエリアの特性として、中山間地域のような遠隔地が多く、土木建設業、農林業等の重作業のある業種割合が高いこと。また、日々の作業現場は事務所から遠く離れたところにあり、何かあってもすぐに対応ができないという課題も抱えています。
 私たちが実際にお会いする労働者さんの10人中8人は有所見者です。こういった重作業の現場で働く方々に共通する所見は「高血圧」「脂質異常」「肝機能障害」。治療放置も散見され悩ましいところです。

図表2 保健指導の内訳(2020年度)
図表2

グラフ1 業種別地産保利用状況(2020年度)
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会うべき人に会える体制づくり

 気になるハイリスク者は現場作業であることを理由に「保健指導お断り」になるといったケースが多かった実態を改善すべく、2019年度から、対象者の選定を産業医に依頼。コメントに追記していただけるようになりました。先生方からも「こういった視点で作業場を見てきてほしい。」との助言が事前にいただけることもあり、思った以上の産物がありました。
 コロナ禍にあっても「就業制限」の労働者への対応については、連絡票を作成し保健師・産業医間で相互に報告・相談ができる体制も整いつつあります。年度内に訪問実績の報告を兼ねてコーディネーターとともにすべての先生方のもとへお伺いすることも定例化。地産保というチームでの産業保健活動は、少しずつ前に進んでいます。

写真1 小規模事業場安全衛生大会の講演風景(2019年)
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地産保活動の今後について

 休憩時間の一服、仕事帰りの一杯に至福の時を感じておられる方々の価値観に寄り添いながら、まずはお話を聴くことを心掛けています。私は「よく眠れていますか?」という問いかけをします。「眠れないから飲む」「だんだん量が増える」「飲んで何が悪い?」というふうに、飲酒に対する思いを語ってくれることがあるからです。さらにその背景には、単身者であったり、同居家族の介護問題等の理由が見えてくる場合もあります。特に治療放置者には、このような背景から健康へのモチベーションが持ちにくい方々が多いと感じています。継続的なかかわりを必要とする対象者の場合は、地産保利用に上限があること(年度内2回まで)と、現在のマンパワーでは対応の限界もあります。来年度に向けて、継続ケースについてはオンライン面接も視野に入れた取り組みを進めていこうと計画中です。
 保健所管内地域職域連携会議担当者間での「顔の見える関係づくり」も進んでいます。これを実のある活動にしていくためには情報共有のあり方についても担当者間でともに考え、地域づくりに貢献できる地産保でありたいと思っています。


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