今年も子どもたちにとって、長くて短い夏休みがやってきた。熱中症などには注意しつつ、楽しい思い出がたくさんつくられることを願っている。
私にとって少年時代の夏休みの思い出といえば、夏祭りである。父親の実家は山形県の最上川沿いにあり、ちょうど対岸が地域の夏祭りの花火打ち上げ会場という、絶好の鑑賞スポットであった。そのため、毎年夏祭りの日には親族一同が集まり、家の前にパイプ椅子を並べて観る。様々な趣向を凝らした花火がある中、フィナーレを飾る二尺玉10連発は一発ずつ打ち上げられるので賑やかさはないが、首が痛むほど真上を向いても視界に収まりきらない花火と、ぱっと花火が開いてから少し遅れてやってくる「ドーン」という重低音は、あの場所だからこそ感じられる特別なもので、まさに圧巻のひと言である。
ただ、思い出としては、花火そのもの以上に、「花火のお供を何にしようか?」と悩んだことの方が鮮明に刻まれている。限られた予算の中で、何を買うべきか。たこ焼きと焼きそばはどちらにしようか。枝豆は外せないな。ラムネとかき氷は欲張り過ぎだろうか…。
くだらないと思うかもしれないが、少年の私が1年で一番悩むのがこの時だった。それくらい、花火のお供を大切にしていたのだ。大人になってから、たまにこの時のことを思い出し、半ばあきれながらも「より良い瞬間のためにこだわり抜く姿勢」は忘れてはいけないことだとしみじみ思う。と、それらしい言葉を並べたが、ただただ楽しかった思い出としてだけでも、かけがえのないものである。
今年はどんな思い出ができるだろうか。夏休みが、やってきた。 (榎本健太)