「LGBTのセミナーを受けたくらいで、理解した気にならないでほしい。」LGBT当事者である友人からこぼれた言葉であった。彼女はどのくらいの期間、どのような苦しみを抱えてきたのであろうか。LGBTに限らず、マイノリティに対する偏見や差別を生むのは「無知」や「無関心」である。それらをなくそうと、世間ではマイノリティを主人公にした映画や小説が増えていたり、企業においてはマイノリティが働きやすい職場環境を整える取り組みの導入やセミナーが開催されたりしている。
しかし、私はそれだけでは、当事者の味方にはなれないと考えている。偏見や差別は誰にでも存在し、知識を身に付けることだけではなくならず、ただ潜在化していくだけだ。そして、当事者は一見「理解者」に見える相手の潜在する偏見や差別による振る舞いには必ず気付き、失望する。
このうわべだけの偏見や差別をなくすためには、今一度自分が今までマイノリティに対して正直にどう感じていたかを振り返り、自覚することが必要である。自分自身の価値観の中に相手と関わるうえで傷付けるものがないかを考えることが大切である。
私の望む未来は、主人公がマイノリティであるがゆえに話題作になるような映画や、自社アピールとしてマイノリティが働きやすい職場であることを誇らしげに掲げる企業さえももう現れなくなることである。そのために、私自身も常に自己研鑽と価値観の振り返りを忘れずに本会事業に取り組んでいきたい。 (神山奈々)