児童養護施設や里親家庭など社会的養護の経験者のことをケアリーバーと呼ぶという。保護(ケア)を離れた人(リーバー)が語源である。
先月8月3日の毎日新聞に、一つの記事が掲載された。『23歳の成人式自立の証し』。児童養護施設を退所したその女性は自立に精一杯で、二十歳の成人式に出席することができなかったという。そのため、ボランティア団体が「成人式」を企画し、3年遅れで成人式の振り袖を着たという記事であった。
児童養護施設は原則、高校を卒業すると退所し、一人で生活をしなければならない。進学をする人もいるが、就職の方が断然多い。
厚生労働省による「児童養護施設等への入所措置や里親委託等が解除された者の実態把握に関する全国調査」(令和2年度子ども・子育て支援推進調査研究事業)が今年4月に発表された。調査対象者数 20,690 人に対し、回答件数 2,980 件(回答率 14.4%)であった。回答者は「働いている」71%、「学校」23%、「その他」6%であり、現在の暮らしの中で困っていることや不安、心配について尋ねると、「生活費や学費」34%、「将来」32%、「仕事」27%となっている。記述回答として、「孤独感が常にあって、いざというとき誰にも相談できない時期があった」「すぐそばに頼れる人がいないので不安」など、ケアリーバーを取り巻く厳しい現状の中で、生きていることがわかる。
原則18歳までの入所中は、様々な支援の手が入るが、退所と同時に自立をしなければならない現実がそこにある。それでも成人式を迎えられた女性は、支援団体と巡り合えたので、希望が持てたと思う。支援と結ばれない人が、どこでどのように支援を受け、生きていかなければならないか考えさせられた記事でもあった。 (鈴木隆雄)