天馬空 ~JFPA職員のリレーエッセー~
天馬空 ~JFPA職員のリレーエッセー~
第807号

 先日、雑居ビルで階段を踏み外した。下ろうとしていた勢いで腰を打ち、強烈な痛みと恥ずかしさでその場をすぐに離れたが、しばらくしてから「なぜ踏み外してしまったのか」「どうすればこんな思いをしなくて済んだのか」と考える。
 いわゆる歩きスマホをしていたわけでも、他の何かに気を取られていたわけでもない。ただ、そこは一部だけ電気がついておらず真っ暗で足元がとても見にくかった。階段に近づいた時に暗く感じたのは確かで、その時に引き返せばよかったか、はたまた階段を使わずにエレベーターで行けばよかったのか。
 しかし、今回は打ち身程度の怪我でよかったのかもしれない。確かに痛みは伴うが、自身に何が起こったのか目に見えて分かる。もしこれが痛みを感じず、自覚症状もない病気だったらと思うとぞっとする。
 数十分後に同じ階段を今度は上る必要があったので行ってみると、なぜか電気がついていた。誰がつけたのかは分からないが、同じ思いをする人が減るなとほっとしたのと同時に、初めからそうしておいてくれと思う。
 先人は「一寸先は闇」と言ったが、一人で暗い道を行くのはあまりにも危ないことを、身を持って経験した。我々は予防啓発のための資材を作成している。これらが必要な人々の手に渡り、健康への道を一寸でも照らす明かりになることを願う。 (劍持恭子)



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