思春期トランスジェンダーの家族計画―米国
成人してから子どもがいないこと
米国の思春期トランスジェンダーは、性別違和を軽減するため性別適合ホルモン療法(GAHT:Gender Affirming Hormone Therapy)を選択することが多いのですが、その代償で女性→男性トランスジェンダー(女性として出生し以後は男性と自認する人)の場合は無排卵に、逆の場合には無精子状態となったことなどが報告されています。いずれの場合も、成人になって子どもができないことを大いに後悔するというケースがよく報告されています。
ケンタッキー州ルイビルにあるGAHTを提供するクリニックでは、患者本人の家族計画に対する思いをよく知るため、GAHTを開始した患者に対し聞き取り調査しました。その結果、40人(14~22歳)のうち12人は「挙児希望なし」と回答、7人は里子・養子に興味を示し、16人は「まだ決めていない」と回答、実子を希望した1人は男性→女性トランスジェンダーで精子の凍結保存を選択しました。子どもを希望しない理由は、親になることに対する不安感、子どもに興味がない、子どもを持つと社会的責任が大きくなるのが嫌、妊娠すると自身に対する違和感や嫌悪感が増大するなどの理由でした。
一方、子どもを希望した理由は、ファミリーが欲しいから自身の性別違和とは関係がないという理由でした。成人になって強く後悔する患者の多くは、事前に専門家と相談せず、意思決定をしていなかったという調査結果があります(Vyas、2021)。ルイビル大学小児科の著者らは、治療開始前に医療提供者や保護者と将来の家族計画について十分相談することが重要だと考えています。また小児がん患者と違い、GAHTの患者は卵子凍結保存にかかる費用に医療保険が適用されないことも家族計画のハードルの一つになっています。思春期の時期に家族計画という大きな意思決定をするためには、医療提供者や保護者らの支援が不可欠です。
参考 Conard R, et al. J of Clinical & Translational Endocrinology. 2024;36
(翻訳・編集=オブジン)