【海外情報クリップ】
避妊薬と認知機能―英国
英国からのレビュー報告
認知症は男性に比べて女性の方が発症しやすいことが知られており、最近の基礎研究で見ると、月経周期で脳灰白質容積が変動することを示した研究(Franke、2015)などからも、性ホルモンと認知症との関連性が示唆されています。英国の脳科学分野の研究者らはこのことに関連して、避妊薬(主にピル)の使用と認知症発症との関連性を検討したこれまでの研究報告をレビューしました。英国から4件、米国と韓国から各2件、その他3か国の計11件を調べた結果、3件からは関連性はないとされ、4件では認知症のリスクはピル使用者は非使用者より低いと報告されました。全体で見るとピルの使用割合が高い報告では認知症のリスクは低く、逆にピルの使用割合が低く年齢層が高い女性を対象とした報告では関連性は見られないという傾向でした。シンガポールの報告ではピル使用5年以上では関連性はなく、5年以下ではリスクは逆に下がり、韓国の報告ではピル使用女性の認知症のリスクは非使用女性より低かったとされています。
ピルの使用と認知機能を見た2件のうち、英国の報告では、作業処理速度、視覚記憶、ワーキング・メモリーなどのスコアがピル使用中または使用歴ありの女性は、そうでない女性に比べて高かったと報告しています。ピルの使用期間が長い場合はスコアも高かった半面、ピル使用開始の年齢が高い場合は逆にスコアは低くなっていました。米国の報告では、作業処理速度と視空間認知機能はピル使用者が非使用者より優れているが、言語能力、ワーキング・メモリーでは差がなかったとされています。これらのことから、ピルの使用は女性の脳機能に対してむしろベネフィットがある可能性が示唆されました。なお、これらのことはあくまでも観察研究から示された結果なので、ピルの使用と認知症予防との因果関係を示すものではないと研究者らは言及しました。
参考 Gregory S, et al. Frontiers in Global Women's Health. 2023 Nov.
(翻訳・編集=オブジン)