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海外情報クリップ

【海外情報クリップ】
人口減少と家族計画

第845号

国際不妊生殖医学会の意見

 これまでの先進国の人口政策は、急激な人口増加を抑制することに重点が置かれていました。しかし、一転して減少傾向に転じ、人口高齢化と相まって歯止めがかからなくなると、少子化が将来の大きな問題になってきました。
 国際不妊生殖医学会(IFFS)によれば、特殊出生率(15~49歳の女性1人が産む子どもの数)を2005年から21年でみると、アジアでは2.39から1.94へ、北米は2.01から1.64へ、アフリカにおいても5.0から4.31へ低下し、世界の約半数の国では人口維持の水準に達していません。
 IFFSはこの問題を家族計画という見方で捉えています。誰もが平等に“子どもを持ち、希望する家族を実現する権利”があり、その方法として自然妊娠、生殖補助技術、代理母、養子縁組などを包括したファミリー・ビルディング※を支援するべきという考え方です。
 ここ数十年で生殖補助技術は大きく発展して富裕国の新生児の約1割がその恩恵を受けている半面、高額な費用が障壁となっています。費用の補助も一部の国で限られた範囲にとどまっており、さらに挙児を妨げていることは、生殖関連の情報―例えば高齢出産のリスクあるいは性感染症や婦人科疾患が及ぼす影響など―の認知度が低いことに加えて、精子に及ぼす環境物質、喫煙、生活習慣等の影響などの研究成果が十分得られていないこと、就労女性に対する支援が足りないことなどが挙げられています。IFFSは、情報提供に加えて必要な不妊検査をなるべく早く行い、医療費の補助を充実させることを提言しました。
 一方で人口増加と気候変動を関連付ける指摘に対しては、これは1人当たりのエネルギー消費量の問題なので人口制限では解決しないと考えています。IFFSが提案する不妊・生殖関連の施策は、人口が高齢化するほど、その経済効果は費用を上回るであろうと予測しています。

※個人またはカップルが家族を形成または拡大するプロセス。

参考 Fauser B, et al. Human Reproduction Update. 2024.30(2)

(翻訳・編集=オブジン)



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