開かれた性教育へ
英国内で報告された性感染症の中には、全件数の半数以上を同性愛者が占めているものがあります。不特定多数のパートナーがいることと感染予防の知識が足りないことなどが関係するといわれており、その背景にあるのは学校性教育の問題です。つまりマイノリティーの生徒たちに特徴的な性行動からみた性教育の機会が思春期の時期に与えられていないということです。異性間の性行為を前提にした避妊や感染症予防が今の性教育の根底にあります。英国人LGBTQ対象の調査でも同性間の安全な性行為に関する指導を受けたと回答したのは全体の20%だけでした。異性間の性関係のみがノーマルであると指導される環境下では、彼らは声を上げられず、知られるとハラスメントを被るリスクさえあります。
このことから英国ケント州の公衆衛生基金とグリニッジ大学は学校性教育の現状を分析しました。それによると、今の性教育はマイノリティーに対する教師自身の価値観で進められている現状があり、LGBTQを視野から外した性教育を受けていると、彼らの心にはストレスが鬱積(うっせき)していき虐待的な性関係に陥りやすく、疎外感から自殺念慮へ発展するリスクも高くなること。そのため情報源をネットに頼り偏った性の知識を吸収することが多くなり、ポルノ動画を見る機会が増えると危ない性行為を試したくなることなどでした。
研究者らは、単純に同性間での性感染症の予防知識を与えれば良いというものではなく健全な情動を促す指導内容でなければならないと述べ、様々な形の性行動の中で気を付けるべきことを教える、それも全ての生徒に向けて発信できる開かれた教室、差別や批判のない雰囲気が必要で、さらにオンライン情報の扱い方も指導すべきだと提言しました。
参考 Epps B et al., The Journal of School Nursing. 2023 Vol.39(1)