専門家ワーキング・グループの提案
イタリア政府統計局によれば、18~49歳の女性のうち経口避妊薬(ピル)を使用している割合は20%と欧州他国に比べてかなり低く、男性コンドームの使用も35%だけです。一方で全く避妊しない女性の割合は23%と高く、望まない妊娠は全体の3分の1とされており、いかに避妊薬を普及させるかが目下の課題となっています。2021年に英国では黄体ホルモン単剤ピル(1錠中デゾゲストレル75㎍含有、通称:ミニピル)を処方箋薬からOTC薬(一般薬)への区分変更が承認されました。これを踏まえてイタリアの避妊に関する専門家らは、ピルの普及、特にOTC化を進める目的でワーキング・グループを立ち上げました。婦人科避妊学会の役員3名を中心に、一般家庭医、薬剤師会代表、行政代表など7名からなるグループは次のような現状分析と提案をまとめました。①避妊薬入手の際に頻繁に障害となっているのは医師の処方箋が要ること②避妊希望者は最初から効果の高い避妊法をインフォームド・コンセント(説明に基づく同意)を得て取り入れること③デゾゲストレル単剤ピルは一般薬として適していること④薬の知識を常に更新し避妊カウンセラーとしての能力がある薬剤師はデゾゲストレル単剤ピルを処方できるとすることなどです。とりわけ薬剤師の避妊コンサルティングへの期待度は高く、すでに緊急避妊薬を処方できることに加えて国土に遍在していること(住民2,900人に1軒の薬局がある)が強みとなっています。またデゾゲストレル単剤ピルは、使用方法が簡単なうえ過去25年間の使用経験から妊娠確率(避妊失敗率)は0.3%と極めて低く(Trussell、2011)、乳がんの既往や肝臓病、あるいは特定の薬による治療中の患者などを除いて使用してはならない場合が比較的少ないことも一般薬に適しているとされています。
参考 Nappi R et al., Gynecological Endocrinology. 2023 Vol.39, No.1