英国からの報告
英国では、同意のない性行為から発展する性暴力被害が若年女性の間で増加し、以前から社会問題になっています。そこで英国家族計画協会は、約2,000人の男女を対象に「この場合は性行為をしてもよい、あるいはしてはいけない」と判断する拠り所となる言葉、表情・しぐさ、さらに同意撤回の可否などを想定状況ごとに回答する―というオンライン調査を実施、これをグラスゴー大学の研究者らが分析した結果は次の通りでした。
各状況男女別に「性行為をしてもよい」と回答した割合は、
・互いに接近した: 男性46%、女性57%
・しぐさで判断:男性19%、女性11%
・顔の表情で分かる:男性42%、女性48%
・黙り込むか逆におしゃべりになる:男性31%、女性37%
・視線を合わせる:男性32%、女性37%
・はっきりイエスと言った:男性52%、女性62%
・酔っている時にイエスと言った:男性23%、女性12%
―などです。研究者らの注目点は、若年男性はキスをしたり酒を飲んだりしてテンションが上がっている、拒否する様子がないなどの状況は「同意」と解釈する傾向があり、一方女性は、キスや飲酒は必ずしも「同意」とは考えておらずプロセスを大切にする―などの男女間の認識の違いでした。
性暴力に発展した事例の多くは親しい間柄で飲酒を伴うケースが多く、研究者らによると、性暴力の原因はコミュニケーションの問題ではなく、女性が態度や表情で拒否しているのを男性が無視してしまうこと、女性が示す表情・しぐさを男性が読めない、理解できるまでの経験がないことなどと説明しています。また、7割の女性は途中で行為を中断して同意を撤回できるとするのに対し、男性は半数以下でした。つまり、飲食を共にした、初めての関係ではない、既に寝室にいる、服を脱いでいるなどの場合や状況下で拒否するのは許せないと思っており、これらの認識のズレが性暴力へと発展させる元になっていると考えられました。
参考 Willis M, et al. J of Public Health Vol.45,No.1,2023