体内の性ホルモン量
子宮頸がんの原因とされるハイリスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)は、6か月で半数、1年では7割の感染者でウイルスは消失する一方、感染が持続していくと細胞の異常増殖を経てがん化していくことが分かっています。しかし何が持続感染を引き起こすのかについてはまだ十分知られておらず、一つには性ホルモンが関与していると考えられています。そこでスイス・チューリッヒ大の研究者らは、性ホルモン(エストラジオールとプロゲステロン)の体内濃度が持続感染を予測する因子になるのではないかと考え、ピルを使用している39人の健康な若年女性を対象に予備試験を行いました。全員HPVワクチンは接種しておらず非妊娠ですが性交経験者です。試験開始時では22人がハイリスクHPV陽性、17人は陰性でした。12か月後に開始時と同様の子宮頸部標本で検査したところ、陽性者22人のうち感染が持続していたのは6人、消失したのは14人、ドロップアウト2人でした。12か月間に性ホルモンの検査は週1回起床時と同日3回唾液標本から測定しました。
その結果、試験開始時の感染者は非感染者に比べて、起床時と日中いずれもエストラジオール値は有意に高く、12か月後も持続感染していた被験者6人のエストラジオール値は、12か月間に消失した被験者14人に比べて起床時と日中とも有意に高くなっていました。一方、プロゲステロンとの関連性は示されず、過去の疫学調査でもプロゲスチン単剤避妊薬と子宮頸がんとの関連を示すエビデンスは得られていません。
エストラジオールは、子宮内膜増殖を促すため、HPVが存在していれば細胞増殖に伴いウイルス量も増えて検査で陽性になりやすいと考えられています。実際、月経のある女性のHPV検出がおおよそ28日周期で変化し、排卵前後にピークになるという研究報告があります。
(Liu. J Infect Dis. 2013)
参考 Fischer S, et al. BMC Cancer. 2022.22