◆薬の用量との関係
黄体ホルモンのレボノルゲストレル(以下LNG)は、排卵を抑える作用からピルの成分として古くから使用されています。しかし、その避妊効果は正しく使っても使用する女性により効果に違いがあり、とくに過体重(BMI25~29.9)や肥満(BMI30~)の場合は効果が減弱し、標準体重に比べて妊娠するリスクはそれぞれ2倍、4倍と言われています。
オレゴン大学産婦人科のエデルマン医師らは、BMI30以上の健常女性に現在市販のLNG緊急避妊薬(1.5mg)を服用してもらい血中濃度のピークを測定したところ、BMI25未満の場合の約半分でした。(Edelman, Contraception 2016)この薬物動態の結果から、エデルマン氏らはLNGを倍量の3.0mgとした場合の効果を肥満女性で確かめるための比較試験を行いました。卵が卵胞から排出されると卵胞は縮小しますが、これを指標として排卵の有無を確認しました。LNG3.0mg服用女性は35人中24人(69%)が服用後5日間(精子の授精能は約5日間)で観察したところ、縮小は認められず、つまり排卵は阻止され、避妊効果はあったことが示されました。
一方、通常用量LNG1.5mgの場合は35人中18人(51%)に排卵阻止効果が示されました。排卵の確認は経腟超音波画像で判定しますがやや熟練が必要なので、卵胞縮小が50%以下の場合は黄体化ホルモン(LH;排卵の直前に急上昇する)で確認しました。これらの結果から、LNG3.0mg投与は通常用量1.5mg投与よりも避妊効果はある程度上がりましたが、有意差はありませんでした。LNG倍量投与は期待された効果がまだ得られていないことから、エデルマン氏らは、現在米国で唯一肥満女性にも使用が認められているウリプリスタルという避妊薬を使用することを薦めています。
参考 Edelman AB, et al. Obstet & Gynecol.Vol.140,No.1,2022