◆英国からの報告
英国では、人口の約2.4%がLGB、0.2%~0.6%はトランスジェンダー(T)と自認しており、国全体の高齢化が加速する中でこれらの人も様々な医療ニーズに直面しており、またジェンダー特有の健康問題を抱えています。
これらに対処するため医師に対してどのような知識と技量が求められているのか、英ブライトン・サセックス医科大学公衆衛生学部は、英国37医科大学に対し学部教育カリキュラムの中のLGBT関連の内容に関する調査を行いました。回答が得られたのは19校(51%)だけでしたが、その結果を見ると次の様でした。
多くの大学で現在のカリキュラムに含まれている内容は、LGBTの人のメンタルヘルス、ジェンダーアイデンティティと性指向、受診における不平等、医療に関連した差別などでした。含まれていないあるいは不十分な内容は、LGBTの人の出産と育児、思春期の健康管理、LGBT家庭への理解、成人病などでした。これらに加えて今後カリキュラムに入れる計画のある内容としては、LGBT患者とのコミュニケーション、LGBTと生活習慣(飲酒・喫煙・薬物)、性転換術、HIVを除く性感染症などとなっていました。ただし大学間の差は大きく、他校のカリキュラムで既に入っている内容をこれから準備する段階だという大学も多くあります。また授業形態は、eラーニングの導入、少人数制の教室、例示と討論を繰り返すなどの工夫がされています。
多くは今後LGBTに関連する内容を充実したい意向ですが、目下のハードルはカリキュラム枠の制限と教師の確保です。研究グループは改善策として、現行カリキュラムの内容で足りないところを点検し、LGBT関連団体から講師の派遣依頼、効率の良いオンライン授業の積極的導入、他部門や他校と教育資源を共有することなどを提案しました。
参考 Tollemache N, et al. BMC Medical Education. (2021)21,100