Facebook Twitter LINE
海外情報クリップ

【海外情報クリップ】
性暴力被害の影響―米国

第822号

◆高血圧のリスク
 性暴力による影響は、心的外傷(トラウマ)だけではなく身体への影響、例えば高血圧とそれに伴う心血管疾患のリスクを高める可能性を示唆する報告が、米国心臓学会からいくつか出されてきました。近親者からの暴力や職場のハラスメントが関係するとされていますが、中でも性に関わる場合とそうでない場合の違いが注目されています。
 これをさらに検討するため、ハーバード公衆衛生大学院の研究グループは、大規模疫学研究ナースヘルス研究Ⅱ(1989年より現在まで続く、参入時24~42歳)に参加した女性のうち、2008~15年まで前向きに追跡調査(2年毎)した33,127人のデータを分析しました。
 その結果、性的暴行または性的ハラスメントによるトラウマ被害者は7,862人(24%)、性的暴行と性的ハラスメントの両方によるトラウマ被害者は1,980人(6%)、性に関わらないトラウマ被害者は16,668人(50%)、トラウマなしは6,617人(20%)でした。トラウマなしの場合の高血圧の割合をベースにして、トラウマの原因ごとに被害者の高血圧の割合を比較したところ、性的暴行の被害者は+11%、性的ハラスメント被害者は+15%、これら両方の二重被害者では+20%とそれぞれ高くなっていました。
 しかし、性に関係しないトラウマ被害者の場合は、有意な高血圧の上昇は見られませんでした。トラウマ体験者がよく陥る飲酒・喫煙、さらに食習慣やBMI、高血圧の家族歴などで補正すると、性的暴行の場合は有意な高血圧の上昇はなくなりましたが、性的ハラスメントだけの被害、性的暴行との二重被害の場合の高血圧発症はそれぞれ+12%と+17%と依然有意に高くなっていました。性的暴行や性的ハラスメントを受けた時期とその程度に関する情報を得ることで、高血圧発症につながるメカニズムをより明確にできると研究者らは考えています。

参考 Lawn RB, et al. J of Americal Heart Association. 2022;11

(翻訳・編集=オブジン)



JFPA無料メルマガ登録をお願いいたします!

前の記事へ 次の記事へ

今月のページ

季節号・特集号

連載・コラム

バックナンバー