◆医師の意見
保守的なドイツ・仏語圏のスイスでは、緊急避妊薬以外のホルモン避妊薬(以下HC)は医師の処方が必要ですが、2019年の法改正でHCをより入手し易くするための提供方法の見直しが予備調査を併せて進行中です。今回の意見聴取先は産婦人科医105人と家庭医27人、小児科医10人、その他5人、平均年齢49歳、女性66%、男性34%でした。HC薬剤師処方の利点と問題点に対する意見を4段階リッカート尺度で評価した結果は次の通りでした。割合(%)は「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」の合計です。
Q.使用者の立場から見た今のHC入手の障壁は何ですか?
受診の予約が煩雑(74%)
家族に知れる(71%)
診療に関わる費用(69%)
宗教観からの躊躇(65%)
Q.医師の立場から見た薬剤師処方のメリットは?
アクセスが容易(95%)
意図しない妊娠をより防ぐことができる(80%)
より多くの希望者が利用できる(78%)
現在あるリソース(薬局)を活用できる(72%)
Q.HC薬剤師処方で懸念することは?
使用者の安全性の確保(97%)
十分ではない避妊薬の教育課程(93%)
処方前の検診がスキップされること(80%)
Q.新しい処方モデルとして、
医師のみが処方(75%)
初回処方は医師で次から薬剤師(70%)
医師または薬剤師のどちらが処方してもよい(39%)
OTC薬(処方箋なし)にするべき(6%)
などの回答でした。
同様の調査は薬剤師対象にも行われており、初回処方が医師で次から薬剤師のモデルに95%が賛成し、OTC薬はわずか5%でした。(Yous、2020)スイスの薬剤師教育は5年でその後専門課程を経て独立開業が可能となります。避妊薬に関する専門課程は必要だと著者らは考えており、これに加えて薬剤師のためのHC処方チェックリストと医師照会ルートを示すガイドラインを策定するのが望ましいとしています。
参考 Yous T, et al. Pharmacy. 2021.9