◆サウジアラビアの調査から
避妊法を決める上で男性パートナーの影響は大きい反面、男性側から見た避妊法に対する意識調査は多くありません。そこでサウジアラビア王国のキング・サウド大学医学部の研究者らは、同大学病院を受診した男性患者(平均年齢38歳)に対し、2019年12月から20年5月にかけて調査(ほぼ全診療科で対面インタビュー)を行いました。その結果、緊急避妊薬(EC)の認知度は低く、全体の約80%はECを聞いたことがないと回答しました。
次にこれらの回答者に対してECについて簡潔に説明したうえで緊急避妊に対する意見を聴取したところ、半数を超えた回答は次の通りでした。
・ECはもっと宣伝するべきである(86%)
・ECは男性も入手できるようにするべきである(71%)
・友人の男性にもECを薦める(61%)
・自身がECを購入することに躊躇はしない(71%)
などとECは男性が入手するべきである、またそのことに抵抗はないという考えでした。その一方で、
・ECを使うか否かは男女の両者で決めるべきである(86%)
・文化・習慣はECを拒否する理由ではない(79%)
・宗教はECを拒否する理由ではない(64%)
でした。
研究者らはこれらの結果から、サウジ社会が一段と柔軟で多様化してきたこと、また、イスラム教義が禁止する中絶に比べてECはより許容しやすい背景があると指摘しました。その一方で、家族の事は主人(男性、夫)が決めるというアラブ文化は根強く存在しており、同時に、避妊については女性パートナーと互いに話し合うという環境を男性が積極的に受け入れるようになったと分析しています。
著者らは既婚女性を対象にした別の調査も行っており(Karim 2015)、避妊に対するアラブ人女性の考え方も文化・宗教の影響を受けず、男性パートナーと相談するという傾向を示していますが、やはりECの認知度は低くわずか6%でした。
参考 Karim SI et al. Plos One. 2021 Apr.26 ;16(4)