◆米国の縦断研究
月経前症候群(PMS)とその重症型の月経前不快気分障害(PMDD)の成人リスク因子は、肥満や食事(カルシウムやビタミンBの不足)、喫煙などが挙げられていますが、小児・思春期に関しては、“心・身の虐待”以外はよく分かっていません。
初経前には症状がないことから性ホルモンの変動がその一つと考えられ、米ハーバード大学公衆衛生大学院の研究者らは、初経の発来が早いか遅いかが有症リスクに影響を与えていると仮定して調査を行いました。米50州における9~14歳の男女を長期追跡するGUTSコホート研究から、月経前症状の有無を2013年に調査して約6千5百人の回答を得ました。
その結果、月経前症状を有する女性約1千人(全体の約15%、20歳以下での発症は690人)を調べたところ、初経年齢の平均12.79歳から標準偏差(1.16歳)以下の早い初経でPMS有りは144人(早い初経全体の14.0%)、対して標準偏差以上の遅い初経でPMS有りは100人(遅い初経全体の10.5%)と初経の遅い女性で割合は有意に低くなっていました。
PMDD(疑い例)で見ると、早い初経では24人(2.3%)、対して遅い初経では13人(1.4%)と低くなっていました。初経年齢の平均域(11.64歳から13.95歳:全体の約7割)のPMS有症率は13.8%、PMDDは2.4%と、早い初経の場合と同様でした。これらのことから、初経が早いと性ホルモンの変化が積み重なりリスクが上昇するとは言えず、初経時期と成人期の月経前症状リスクとは逆の関係(遅い初経でリスクが低くなる)を認めたと研究グループは述べ、さらに、初経時期と月経前症状はいずれも遺伝するとの報告があるので、遺伝子を共有している可能性も指摘しました。
なおGUTSは、ナースヘルス研究Ⅱに参加した女性の子供約2万8千人を対象に健康に影響を及ぼす遺伝・環境因子を生涯追跡する疫学研究です。
参考 Lu D, et al. Hum Reprod. 2021 Jan 25;36(2)