◆スウェーデンの調査から “MeToo”を発端として職場におけるセクシュアルハラスメント(以下セクハラ)に対する社会意識が高まり、以来多くの調査結果が公表されました。しかし集団の特徴や文化背景、計測方法や調査期間により報告数に大きな差が見られます。 スウェーデンの研究グループは、広汎な大規模集団を対象にして13年間に及ぶ前向き調査を実施し、中でもセクハラによる最も重い影響である自殺に関する検討の結果を発表しました。2年ごとに実施される社会調査(SWES=スウェーデン職場環境の全国調査)から抽出した16歳~74歳の男女に、まず電話インタビューしてから調査表を記入する方法で約8万5千人(1995-2013年、男女半々)からの回答を分析しました。 その結果、過去1年間に職場セクハラの被害に遭ったと回答した割合は男性の1.9%、女性の7.5%、全体では4.8%でした。 全くセクハラに遭わなかった人に比べて被害者には次のような特徴が見られました。独身、離婚・離別、生まれがヨーロッパ以外、特に男性で際立っていたのは子供のいない離婚者あるいは独身、ヨーロッパ以外の生まれでした。回答者約8万人を追跡したところ(108万4千人・年:平均13年間)125人の自殺死(0.1%)が発生し、このうち職場におけるセクハラ被害者全体の中での割合を見ると、11人(0.3%)が発生しており、非被害者に比べたハザード比(被害後の自殺発生のしやすさ)は約2.2となっていました。同様に、自殺企画のハザード比は約1.5でした。セクハラ被害者の割合は女性がより高くなっていましたが、自殺死あるいは自殺企画は男女間に差はありませんでした。さらに職場の上下関係から見た違いも認められませんでした。 参考 Hanson LM, et al. BMJ. 2020;370