私は相談員の業務に従事して約1年、相談員の中で一番の新米です。ですが実は、クリニックとはもう少し古いお付き合いがあります。10数年前に看護大学最後の総合実習として、本会で電話相談の見学実習をさせていただいたことがあるのです。学生時代はピアカウンセラーとして、茨城県内のあちこちの中学校や高校で性教育を行ったり、JFPAが支援する若者委員会「U-COM(ユーコム)」と都内でコンドーム配布をしたりしていた私の性教育人生の幕開けの頃です。実習の際、男の子からの電話相談に真摯(しんし)に、そして優しく答える相談員さんの姿がとても心に残っています。
その後、看護師として婦人科の勤務や子育て中に市民活動などをしながら10数年を過ごし、本会の相談員勤務につながったきっかけは、SRHセミナーでたまたま現役相談員さんのお隣に座って声を掛けていただいたたこと。まさかあの憧れた相談員になれるとは! 大阪からの転居直後で職探し中だった私にとって運命的な出会いでした。
この1年の間に、日本思春期学会にてLINE相談の特徴を演題発表する大役や、市谷クリニックの閉院直前に北村先生の思春期外来での診療介助も、新米にも関わらずちゃっかりと経験させていただき、「やりたい」を声に出すことの大切さを痛感しております。そしていつも温かく応援、ご指導を下さる北村先生、相談員の先輩方や杉村センター長には感謝するばかりです。
相談を受けながら日々感じるのは、思春期の子どもたちが科学的な知識や情報を自分の体験に結び付けられず、不安や罪悪感といったネガティブな感情を持ちながら性に向き合っている姿です。
思春期相談がLINEになって数の増えた女子の自慰行為に関する相談では、自慰行為に対するタブー感や罪悪感を訴える内容が目立ちます。「自慰をしているせいで初経がこないのか?」という相談には、何故そう考えたのかと頭の中が?マークの大行進でした。
特に気になるのが、男女とも射精・排卵・月経・妊娠の成立についての知識がない故の不安、たとえば妊娠する要素が一つも無い妊娠不安、逆に決して心配ゼロと言えない状況を書き連ねているのにもかかわらず「大丈夫と言ってもらえるだろう」という楽観的な相談も見受けられます。パートナーとの関係性、状況を推察しながら相談者に寄り添った返答をしつつ、必要に応じて緊急避妊や低用量ピルの情報を伝えますが、どこまで伝わっているのか心配になることも多々あります。
ここ数年のおうち性教育ブームや性暴力に対する世論の高まりを受け、良質なサイトや書籍や各地で性教育の活動されている個人・団体によりSNSでの発信が増え、学校の全体教育ではカバーできないような個別性のある具体的な情報にも思春期の子どもたちにアクセスしやすくなったのではないかと感じています。私たち相談員も、もっと学んでほしいという願いを込めて、北村先生の書籍や本会作成の「#つながるBOOK」へのリンク、各サイトをLINEの最後にメッセージとともにご紹介することがあります。
しかし、見るだけ・読むだけでは伝わらない事もあります。もっともっと思春期の子どもたちが安心してつながれる場が必要と、先輩相談員がご自身の勤務する婦人科で、街角保健室を開設することになりました。ここでも「やりたい」を声に出し、形にした成果があります。先輩の奮闘が、子どもたちに届くようエールを送っています。