令和4年4月から、人工授精等の「一般不妊治療」、体外受精・顕微授精等の「生殖補助医療」について、保険適用が開始されました。それに伴い保険適用についてのご相談も寄せられています。
3月末まで行われていた「特定不妊治療費助成」との違い・制度の移行期間や、自分が現在受けている治療が保険適用になるのか等のご相談が大半を占めています。医療機関や医師、加入している健保組合等に確認しても明確な回答が得られない、問い合わせ先がわからないと右往左往している様子が窺えます。不妊治療を提供している大半の施設では、大規模病院のような相談窓口が併設されているところがほとんどないことが原因と考えられます。
何らかの治療を受けるにあたって、それが保険適用か自由診療なのか分からないまま治療を進めるということは想像しづらく、当事者は相当なストレスに晒されていると思います。私たちはその不安な気持ちに寄り添うしかありません。
新しい取り組みのため各所が混乱していることは容易に想像できますが、この制度についての解説や問い合わせ先が当事者にアクセスしやすいものになることを望みます。
今回の不妊治療の保険適用に先立って、日本生殖医学会は、「生殖医療ガイドライン2021」を作成しました。これは、日本生殖医学会が国内で行われている生殖補助医療及び一般不妊治療の各医療技術について、有効性等のエビデンスの有無の評価を行い、医療従事者に向けて、不妊治療のための検査や標準的な治療方法などをまとめているもので、これを基に保険適用の概要が作られました。
これまでは、当事者が各々の治療についてのエビデンスを統一して見ることは難しく、「病院個々に出しているものしか見つけられない」「どうして統一したデータがないのか!」と私も電話口で何度もお叱りを受けました。
今回の保険適用によって、エビデンスが確立されているものといないものの評価や、不妊治療のおおまかな流れは以前より分かりやすくなったと思いますが、前述のガイドラインも医療従事者向けであり、当事者が気軽に手に取れるものではありません。
また、そのエビデンスの有無により、「今使っている薬が保険適用外になる可能性が高く、自費診療になれば治療費が全額自己負担と医師から言われている」、「以前は助成金で減額されていたのに、かえって高額になりそうで困っている」というご相談もありました。
不妊治療を受けることを後ろめたいことのように感じていたが、堂々と治療を受けて良いと思えるようになった、とお話してくださった方のように、不妊治療に対するハードルが下がるのは朗報ですが、当事者が質の担保された治療を受けることができ、かつ費用負担が軽減されることを期待したいと思います。