日本家族計画協会では、この4月から思春期に関する相談をLINEに変更しましたが、「OCヘルプデスク」という経口避妊薬(OC)に関する電話相談は継続されています。
先日、午後からの当番で出勤すると、午前中の相談員が電話中で、なにやら対応に苦慮している様子。耳をかたむけてみると、「OCのオンライン処方後の対応」のようでした。20代会社員である相談者は、初めてのOCをオンライン診療で処方され、「月経開始時に内服を始める」という説明のもと、予定月経初日に内服を開始しました。
ところが月経は起こらず、不安に思いながらも内服を続けていました。5日後、嘔気、発熱(37.5℃)の症状を自覚し、内服開始前に腟外射精の性交があったため、「妊娠したのでは?」と不安になったようです。オンライン診療先に電話をしましたが、電話がつながらず、「OCヘルプデスク」にたどり着いたそうです。
オンライン診療は、新型コロナウイルス感染予防のため、時限的に初診でも診療が受けられるようになりました。処方箋は医師から薬局へFAXで送付し、患者は電話などで薬剤師から服薬指導を受け、薬は郵送などで送ってもらうことができます。緊急避妊薬やOCの処方も同様で、婦人科受診に抵抗がある利用者にはニーズがあるのかもしれません。
一方で、オンライン診療の実態把握や利用者の満足度などは十分に調査されていません。緊急避妊は薬の処方だけにとどまらず、ケアが必要な場合が多く、3週間後の結果が判明する頃には医療機関を受診していただきたいですし、OCは避妊以外に、月経痛や月経前症候群(PMS)、月経不順など、さまざまな副効用が期待できますが、まずは正しく服用できなくては効果も発揮されません。
オンライン診療でOCの説明や継続可能なサポートを得るために、少なくとも通話が可能である必要があるように思います。厚労省は、オンライン診療では「リアルタイムの視覚及び聴覚の情報を含む情報手段」を採用し、対面診療に代替し得る程度のものである必要があると示しており、文字、写真及び録画動画、チャットのみのやりとりを認めていません。OCの通信販売と変わらないオンライン診療は、十分に注意しなければなりません。
私たちの生活は、新型コロナウイルスにより大きく変化しました。そのような中で、OCを初めて利用したい女性たちと婦人科診療の物理的・心理的距離がますます広がってしまわないよう、そして、なにより自分自身のために、受診は必要なものです。今回の電話相談で、コロナ禍でOCを使用し始めた女性たちには困り事があること、そして、従来通りの電話相談は、そのサポートの一助になれると確信しました。
ところで、妊娠不安の相談者には、「対面診療ができる婦人科で処方してもらう」ことをお勧めし、ご本人も「そうします」と納得し終了しました。