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第810号

 東京都不妊・不育ホットライン相談員 金子 友紀

 「東京都不妊・不育ホットライン」の相談員は経過や理由は異なりますが、不妊に悩んだ当事者(ピア)による相談となります。私は今年から参加させていただいていますが、電話をかけることのハードルが決して低くはないということが、相談者さんの第一声から伝わってきます。不妊治療中の誰にも話せない気持ちをお聴きする機会が一番多いのですが、最近は新型コロナウイルス(新型コロナ)による環境変化がきっかけとなった相談を受けることも増えてきていると実感しています。
 40代のお二人の方の相談を紹介します。お一人目は「在宅ワークとなり通勤時間が減ったことで自分を見つめる時間が増え、今まであまり真剣に考えていなかった子供のいる生活を考えたら年齢のこともあるしどうしようと思っている」という内容でした。子供のいる生活を考えるきっかけが新型コロナによってもたらされたということなのでしょうか。この方はそう思い至った瞬間から朝目が覚めた時から寝るまでずっと、子供のことが頭から消えないと仰っておられました。
 一度心の中に置いた「子供」という気持ちは、治療を考えはじめている人、治療中の人、授かった人、治療の終わりを考えている人、治療を終えた人などステージは異なっていても簡単には消えない共通のものではないのかなと強く感じます。医療の発展や治療に関する助成金の拡大や不妊治療の保険適応などの環境面は近年変化をしております。当事者が取捨選択ができることは良いことである一方で、選択肢が広がることでより「子供」という気持ちが心の中に根付くのかもしれません。
 次の方は「治療はもうしないと思っていたけど、助成金の年齢要件が変更になったこともあるし、結果は分からないけれど頑張ることにした。選択肢として特別養子縁組も併せて検討したいけど、治療と縁組どちらも年齢要件があってどうしたらよいのだろう」と。以前なら考えることもなかったのに、新型コロナによって年齢の拡大が話題になったことが、治療の中止を思い直すきっかけになった様子でした。
 ご紹介したお二人からは、「考えることが終わりにできたら良いのに」というどうしようもできない気持ちが共通して語られました。「終わり」を考えるということは、これまでの経験、いろいろな思い、言葉では表せない感情がぐるぐると巡り、簡単に答えが出るものではないと思います。
 どうか一人で抱え込むことはせずに、心の中にある気持ちをお話しに来ていただきたいなと思います。電話をかけてこられるまでに心ない言葉に傷つき話すことへの戸惑いを感じながら勇気を出してかけて来てくれる方々にとって、この場所が安心安全な場と思ってもらえるように心掛け、相談をして下さった方の気持ちが、ほんの少しでも軽くなってもらえるような関わりができればと思います。


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