ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第81話>1999年2月18日(木)予算委員会
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫
若手官僚と用意周到な準備を重ねてきた予算委員会の日程がついに決まった。1999年2月18日(木)午前9時開議。委員会に向けて質問通告書が答弁を求める担当省庁部局に送られた。
2月18日午後1~2時<予算委員会第四分科会>、末松義視(民主党)、横光克彦(社民党)両議員が、「低用量ピル」について質問に立った。末松議員は、①避妊の重要性について、②バイアグラとピルとの審議時間の違い、③ピル情報の公開について、④新薬審議制度の改善について―などを質問し、厚生大臣と医薬安全局長が答弁した。
横光克彦議員は、外務省には、①2月4~12日、オランダ・ハーグで開催された「カイロ会議プラス5」において、国連加盟国中唯一ピルが承認されていない日本が、事もあろうにバイアグラについては6か月でスピード承認をしたことに対する参加者の反応はどうであったか、②ODA予算によって途上国のエイズ並びに人口問題への援助が行われていることは事実か、③世界で広く使用されているピルなどが、わが国の経済的な支援をもとに途上国の人々に提供されているということはあるのか、と質問し赤阪清隆外務審議官が答弁。
厚生省保健医療局長には、①1997年3月にピルの承認について審議中の中薬審が公衆衛生審議会に意見を求め、同年6月回答されているが、これはピルの承認を止めているものではないと理解してよいか、②ピル同様、バイアグラについて公衛審として問題提起をされたか、③公衛審から出された答申には、エイズを含む性感染症について、国民的な予防・啓発などを行うように書かれている。しかし、これらの対策はピルの承認如何(いかん)にかかわらず行うべきものではないのか、④ピル承認後の性感染症対策―などを尋ねると伊藤雅治保健医療局長が答弁に立った。
厚生省児童家庭局長には、わが国の人工妊娠中絶の実態と、特に20歳未満の中絶の状況について質問。横田吉男児童家庭局長が回答。環境庁には、①環境ホルモンを問題にして環境当局がピルの使用を止めさせたという国があるか、②環境ホルモンに関する全体的な対策の中で、環境部局としてピルをどのように位置付けているか―と質問。澤宏紀環境保健部長が答弁。最後に、厚生大臣が、「中央薬事審議会は、医薬品の安全性、有効性を医学的、科学的に審議するのが本分」「本日、外務省や環境庁などからピルを巡っての見解をお窺(うかが)いし、安心いたしました」「3月に答申があるかどうかについては、私どもが決めることではありません。中薬審に審議を委ねていますので、答申があれば、承認に向かうと思います」と答弁していた。