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ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第76話>宮下厚相にピルについて問う

第844号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫
 1999年1月8日(金)午後1時半に、日本家族計画協会の松本清一理事長と人口問題協議会尾崎美千生代表幹事が宮下創平厚生大臣を訪ね、ピルの審議状況について率直に聞いた。筆者の手元に「取扱注意」と書かれた文書が残っている。尾崎幹事のメモからその日の様子を垣間見ることができる。

  1. まず松本理事長から長く認可されない状態に置かれているピルとスピード認可されようとしているバイアグラの違いに疑問を呈すると、宮下大臣も「新聞でも叩かれています」と既にサンケイ新聞の記事を承知のご様子。続いて松本理事長からピルの内容についてはほぼ完全に医学的には問題のないことが証明され、世界的にその使用が定着していると説明。ただ日本に関しては昭和40年(1965年)以来、認可の機運が高まるごとに起こった不運な出来事として、うわさされた政界周辺の動き、エイズの世界的な流行、環境ホルモンなどとの関連が取り沙汰され、今日まで認可が遅れ、世界では我が国だけが例外的な存在になっていると説明。頷きながらじっくり耳を傾けて聞いていた宮下大臣は、問題点として、①日本では輸血によるエイズの発生が多数を占めているが、ピルの認可で性交渉によるエイズ患者が増える恐れがあること ②ピルの認可による性の自由化が一層進み性風俗が乱れるのではないか ③ピルの認可は我が国の少子化に拍車をかけるのではないか、などの疑問を提起。しかし、いずれについても大臣自身がそうした問題点を確信しているというよりも、そういうことを心配する人がいるようだ、という間接的な表現が目立った。

  2. これに対し、松本理事長は、①日本人が多用しているコンドームもエイズや性感染症に対しては万全でなく、避妊と性感染症予防対策ははっきり分けて教育をする必要があること ②性教育に関しては、かえって性活動を活発化させるのではと心配する向きもあるが、実際はその逆であることが実証されていること ③ピルと少子化との因果関係はなく、北欧のようにピルの利用が定着している国の方が少なくとも子ども数の減少を食い止めていることなどを穏やかに平明に説明。

  3. 「自民党の中で頑固な反対者がいるのでは?」という尾崎の質問にも、「国会で堂本さん※が質問するくらいで、政治家の中では話題にもなりませんよ」との答えが返ってきた。以上のことから、必要なことはもっと宮下大臣のみならず、政治家に粘り強く、理解者を増やす必要を強く感じた次第。国会審議でも堂本氏だけでなく、なるべく多くの議員が質問で取り上げるよう働きかけることが肝要ではないか。
  4. ※堂本暁子参議院議員(当時)


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