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ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第32話>ピル承認に向けて メディアでの取り上げが活発に

第800号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫

 1990年7月20日に、日本オルガノン社、第一製薬、シンテックス社の3社より、「低用量ピルの輸入許可申請書」が提出されたのを皮切りに、合計9社12品目のピルが中央薬事審議会・配合剤調査会において審議されることになった。審議は順調に進行していると思われていたが、メディアの論調は殊の外手厳しいものであった。
 87年9月16日、日本経済新聞朝刊では、「家族計画先進国は、英、西独‥日本は13位―米人口危機委調べ。」の表題で、世界110か国を対象にした初の産児制限調査をまとめ、ピルの使用が許されているか、性教育が徹底しているかなど10項目にわたって評価。ピルが承認されていない日本は、先進国15か国中13位だと伝えている。同じ日本経済新聞では、同年10月28日朝刊で、日本大学の津端捷夫助教授(当時)が第三世代のピルを日本女性に投与した臨床試験データを、10月27日に東京で開催されたヒト生殖国際会議で発表したと報じている。
 朝日新聞は「いのちの選択 ピルの時代」をテーマに91年5月28日の朝刊から、「低用量」「世界から孤立」「副作用と効用」「許可の行方」というテーマで4回にわたって連載。筆者は3回目に登場。90年に外国通信社の女性記者から、「『女性自立には生殖のコントロールが不可欠なのに、日本の女性は男の医者や役人まかせで、政府にピル認可の陳情をしたり、圧力をかけたりしたという話は聞きませんね』と言われて、ハッとした。『ピルは産む、産まないを女性が決める手段を持つことになるのです』」との筆者のコメントを取り上げている。その後の筆者のピル承認への異常なこだわりを顧みると、この外国通信社の女性記者とのやりとりが大きく影響していたことが分かる。
 91年1月12日の日本経済新聞朝刊では、「医薬品の審査は最短で約1年半というのが相場。そのため先発組の審査がトントン拍子で進めば年末に承認される可能性がある」と前向きな記事が書かれていたが、6月28日になると、「年内実現は無理?―特殊性に戸惑い、許可作業遅れる」となる(日本経済新聞夕刊)。
 「関係者の話では、価格をどう設定するか/産婦人科など病院内のどの部署が処方せんを発行するか/服用者の年齢制限、の3点について厚生省内での見解がまとまっていない。避妊に使うピルは医師の管理が必要な『要指示薬』だが治療薬ではないため健康保険が使えず、服用者の自己負担となる。(中略)このような特殊性が審査遅れの要因とみられる」と結んでいる。



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