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ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第29話>フランスと日本の避妊法選択の違い

第797号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫

 本会機関紙「家族計画」から「ピル」という文字がとんと見られなくなってから2年近くが経過している。そんな中、「世界出産力調査」の結果が目に留まった(家族計画第315号、1980年6月1日号)。
 フランスでの避妊実行率などを調査したもので、78年1月から10月までの間、20~44歳の女性3千人を対象に行われている。調査対象者のうち90%が回答を寄せたことは、避妊に対する因習的なタブーが強かったフランスとしては画期的だったと言える。
 これによれば、当時、フランス人女性20~44歳の避妊法選択の年齢別使用割合を見ると、避妊実行率が66.8%のうち、ピルが27.6%と最も高く、次いで性交中絶(膣外射精)17.6%、IUD8.7%、リズム法5.7%、コンドーム5.0%であった。ピルの年齢階級別使用率は、20~24歳が38%、25~29歳34%、30~34歳31%、35~39歳20%、40~44歳10%であった。ピルの使用率の年次推移をみると、70年の約7%が、72年には13%、75年には25%に伸びているが、その後は横這い状態となっている。
 調査に当たった研究者は、「ピルがこのように普及している理由の一つは、商業ベースで情報が広く流されているからと思われるが、IUDについては意外だった」と述べている。ピル、IUDいずれも、75年のイギリス(ピル26%、IUD6%)、76年のアメリカ(ピル22%、IUD6%)の同年齢既婚グループを調査した結果よりも高かった。
 79年に、毎日新聞社が実施した第15回家族計画世論調査の結果が家族計画第305号(79年8月1日号)に紹介されている。この結果では、避妊を「行っている」「行ったことがある」を加えた避妊実行率は75.3%と高いものの、「主なもの2つまでの選択を可とする」条件付きではあるが、コンドームが81.5%と圧倒的で、次いでオギノ式定期禁欲法23.2%、スポンジ法8.0%、性交中絶法(膣外射精)5.3%、飲む避妊法(ピル)3.3%となっている。
 この数字は、フランスの調査結果と単純には比較できないが、避妊実行率から単一選択と仮定したときには、ピルの使用率は2.5%と試算され、フランスの10分の1にも満たない結果であった。当時のことであるから、ピルとは言っても高用量ピルが避妊目的で転用されていたと考えられる。
 同調査では、「ピルを知っているか」には78.4%が「知っている」と回答するも、「今後飲むつもりがあるか」を聞くと3.1%と実際の利用率よりも下回っていた。



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