大学婦人協会婦人の地位委員会(山口真委員長)では、1973年11月に、高等教育を受けた女性の生殖問題についての意識調査を実施。その結果が「家族計画」第244号(74年7月1日)で報告されている。この調査は、35年以前に創立された17大学の卒業生約12万人を母集団として、比例割当法によって2982人を対象に質問紙法により行ったもので、回収率は46.8%であった。この調査の中で「ピル解禁」が取り上げられている。
ピル解禁に賛成は17.7%、反対37.2%、どちらとも言えない30.0%、わからない14.4%。このうち、29歳以下では30歳以上と比べて解禁賛成派、どちらとも言えない中立派、わからないが多く、反対派は極端に少ない。これに対して30歳以上では、高年齢になるに従い賛成派と中立派は減少、反対派とわからないが増加傾向にあり、特に賛成派、反対派の30代と40代とでは前者は急激に減少、反対派は急激に増加し、世代間格差が顕著となっている。
解禁賛成の理由としては、賛成派の52.3%は「計画的に子どもを生むことができる」を挙げ、35.1%が「女性に子どもを生む選択権が与えられる」ことを理由に挙げており、「性を自由に楽しむことができる」との回答は6.1%にすぎなかった。その他、①子どもを生んだ以上は20年間にわたり育てる責任がある。そのため、結婚後、女性の理想、希望を追求することができない②人口問題の見地から③中絶を減少させることができる―等があった。このことは、女性が子どもを生み育てることを生き甲斐としながらも、女性のライフサイクルが、今まで自然発生的な子どもの出産によって振り回され、自らの人生の計画性を持つことができなかったか、また、多くの女性がいかに避妊に悩んでいるかを示している。
一方、解禁反対の理由について聞くと、「副作用があり健康を害する」が56.1%、特に20代では79.2%を占め、ピルの副作用問題の解明が解禁に向けた鍵であることを示唆している。また「性道徳の乱れ」を挙げる人が高年齢になるにつれ増加し、20代では13.8%だったのに、50歳以上では51.1%となっている。
調査を担当した山口氏は、ピルの解禁について、次のように提言している。「ピルの使用解禁について調査結果は、副作用のないピルの研究、あるいは避妊技術の開発を強く望んでいることを示している。ピルの使用解禁が女性解放の突破口となることは明らかであるが、ピルの使用による性の快楽と生殖の二元化問題についてはどのように考えているのだろうか」