製薬企業の承認申請からすでに8年が経過している低用量経口避妊薬(ピル)について、厚生省は4日、中央薬事審議会の常任部会を開き、ピルが環境ホルモン(内分泌かく乱物質)のように、長期服用者や環境に与える影響などを調べる検討班を同審議会に設置する方針を決めた。
ピルについては昨年までに、安全性や有効性のほか、解禁が性感染症の増加に与えるなどの審議をほぼ終え、承認は間近と見られていた。検討班は6月中にも発足する見通しだが、未解明な部分が多い環境ホルモンの検討課題が加わったことで、ピルの解禁はさらに遠のきそうだ。
2種類の女性ホルモンから成るピルを巡っては、これまでにも乳がんや高血圧などの副作用が指摘されてきたが、ホルモンを出して身体機能を調節する内分泌系にどのような影響があるかは、よく分かっていなかった。
ところが最近の研究で、長期にわたってピルを飲み続けた場合、服用者本人だけでなく、子供の世代にまで生理的な発育が遅れたり、性的なし好が変わる可能性などが指摘され始めたため、新たに検討会で調べることにした。
同省によると、環境ホルモンの問題がピルと絡めて議論されるようになってから、ピル解禁推進派の中にも慎重な態度をとる人が出始めており、「解禁のメドはたっていない」(医薬安全局審査管理課)という。
低用量ピルについて妊娠機能の低下や市販後調査などについて議論した。妊娠機能の低下については、諸外国の文献データや国内の臨床試験データから、使用中止後約半年でほとんど回復することが示され、おおむね理解を得られたが、10年以上といった長期に使うケースに注意が必要との意見が出された。市販後調査については、血栓症に関して検査項目の整理を行った。
残る子宮頸がんリスク、内分泌攪乱物質、処方医への情報提供―の3点の課題については、16日に初会合があった新薬第5調査会に専門家を補充した検討班の検討状況が報告された。内分泌攪乱物質は継続審議となっており、処方医への情報提供に関しては、日本産科婦人科学会の処方ガイドラインを参考にしながら、専門家と事務局で作業を進めていくことになった。これまでの審議経過の公開に向け、項目の整理に入ったが、公開時期はまだ決まっていない。