1997年は、ピルを巡って慌ただしい日々が続いた。
5月15日には、小泉純一郎厚相(当時)に対して、女性議員有志ならびに各界女性有志が、「生涯を通じた女性の健康について」と題して要望書を手交した。この要望書では、「男女共同参画2000年プラン」(国内行動計画)が1996年12月13日に閣議決定されたことを紹介。この中で、政府は「思春期や更年期における健康上の問題等生涯を通じての性と生殖に関する課題」を掲げ、「全ての女性の生涯を通じた健康を支援するための総合的な施策の推進を図る」と明言していると指摘している。この国内行動計画は、95年に北京で開催された「第4回世界女性会議」の行動綱領を踏まえて策定したもので、女性のエンパワーメント、人権、教育、労働などとともに、女性の健康は重要なテーマのひとつとして位置付けられいている。
わが国においても、女性の社会参加や高齢社会の到来など、女性を巡る社会情勢が大きく変化していること、思春期の少女を取り巻く性の問題、望まない妊娠と人工妊娠中絶による心身への影響、高い妊産婦死亡率、避妊、不妊、性感染症、更年期障害、性暴力など、生涯にわたる女性の健康を巡る諸問題について、早急に取り組む必要があることを明記している。
要望は3部仕立てで、①母子保健だけでなく、生涯にわたる女性の健康を中心とした行政システムの確立②刑法堕胎罪の撤廃・母体保護法等の見直しを含めた女性の健康/権利を総合的に保障するための法整備③避妊の選択肢の拡大からなっている。
特に③については、「望まない妊娠の防止は生涯を通じた女性の健康にとって大変重要である。そのためには、低用量ピルを含めできるだけ幅広い避妊法の選択肢が不可欠である。低用量ピルの認可については早急に結論を出し、また副作用等ピルに関する情報の公開を徹底するための第三者機関によるモニタリング・システムを確立する」としている。要望書の後半には賛同者リストが添付され、国会議員40名、地方議員39名、各界女性有志266名、合計345名の連名で、筆者も、この各界女性有志の末席に名を連ねている。
翌日の日本経済新聞には、「手渡したのは、参議院議員の堂本暁子氏(新党さきがけ)と樋口恵子東京家政大学教授、芦野由利子日本家族計画連盟事務局次長ら」と紹介されている。樋口さんは、「低用量ピルを認めていないのは日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)だけ。治療用の高用量ピルを服用して副作用で苦しんでいる人がいるので早く認めてほしい」とコメントしている。