Facebook Twitter LINE
ピル承認秘話

ピル承認秘話
–わが国のピル承認がこれほど遅れた本当の理由(わけ)–
<第40話>ピルの専門家から学んだ1週間(1)

第808号
ピル承認秘話
一般社団法人日本家族計画協会 会長
北村 邦夫

 1994年9月24日から30日まで、第14回世界産科婦人科学会がカナダのモントリオールで開催されるのを機に、筆者はサンフランシスコ、ニューヨークなどを歩き回った。ピルに関して先進的な役割を果たしている専門家と会うためだった。
 学会に先立つ9月23日、筆者と松本清一日本家族計画協会理事長(当時)は人口問題と家族計画に関する世界的権威者であるカリフォルニア大学バークレー分校のポッツ教授を訪問し意見交換をする機会を得た。
 「私はかねがね日本における経口避妊薬(ピル)の認可についての規制は非常に残念なことと考えております。日本の女性はおそらく、米国の多くの女性に比べ、幅広い性と生殖に関する良質な恩恵を受けていると考えられます。しかしこの良質の恩恵を受けている中をみて、ピルだけが除外されているという特異的な状況が、なお一層奇異なものと思われるのです」
 翌24日には、モントリオールの学会場で米コロンビア大学公衆衛生学部のアラン・ローゼン・フィールド教授と面談した。
 「およそ35年前(当時)に導入された経口避妊薬(ピル)を日本の厚生省が認可しないということは公衆衛生に携わる者や私ども医師にとっては全くの不可解なことであり、ピルのような安全でしかも確実な避妊法を認可していない開発国(多分世界中広く見ても)は日本だけだと思います。過去35年間に世界中の何百万人という女性がピルを安全に使用してきましたし、最近の、低用量ピルはあらゆる研究から適切な審査が行われており、最も安全な薬剤の部類に入るものと考えます。ピルは望まない妊娠を予防するばかりではなく、さまざまな副効用を持っております。
 日本の女性は現在の当局の避妊法に対する政策が的を得ていないため、主として失敗率の高いコンドームを用いざるを得なかったと考えます。その結果、日本は西側諸国の中でも最も中絶率の高い国となってしまったのです。工業国に属している日本のような国においてこのような政策が取られているということは世界の性と生殖に関する健康の研究に携わる研究者および医師にとっては驚くべき事実であります。
 エイズ蔓延を理由に市場からピルを締め出すということは公衆衛生上の見地からも全く訳が分かりません。リスクの高い相手に対しHIV/エイズおよびその他の性感染症を予防するためにはコンドームの使用を推進することは大切なことです。政治の役割は薬剤の安全性と有効性を審査し、各個人がそれによって自ら判断出来るような完璧な情報を提供されることであります」



JFPA無料メルマガ登録をお願いいたします!

前の記事へ 次の記事へ

今月のページ

季節号・特集号

連載・コラム

バックナンバー