1999年、低用量経口避妊薬(OC)が認可された年は、私が兵庫医科大学病院に入局し産婦人科として学び始めた年でもありました。その当時、一部の上司の先生方は「これで子宮内膜症の治療ができるかもね」と話をしており、それをぽかーんとして聞いていた自分が懐かしく思い出されます。しかし、大学病院やその後勤務した市中の基幹病院でOCが採用されることはなく、月経痛といえば鎮痛剤や漢方薬を処方しつつ、OCと触れ合うことなく過ごした9年間でした。
大学や関連病院での研修を経て、腹腔鏡(ふくくうきょう)を志していたのがこの頃です。ある施設で、子宮内膜症の患者さんのために、適用外使用ではありましたが、OCを採用していました(当時、LEP製剤は承認前であったため)。そこで、私もOCを子宮内膜症の患者さんや術後の患者さんに使用し始めました。当然、施設の特性上、避妊で使用している患者さんは、いようはずもなく、月経困難症や子宮内膜症にとってなんていい薬だと感動して使用していました。そのような中で、LEP製剤・黄体ホルモン製剤が保険適用となり、治療の幅が大変広がりました。当時は、子宮内膜症術後にLEP製剤や黄体ホルモン製剤を内服したほうがいいのか、再発してからでいいのかなど、今ではなかなか見ることのない議論がなされたことを懐かしく思い出します。しかし、そのような中で、OCの本来の服用方法である21日実薬、7日休薬(偽薬)というサイクルではなく、連続服用で休薬期に起こる出血時のトラブル回避を試みていくなど、今のLEP連続服用薬につながる治療を多数の施設では経験的に行っていたことなどを考えると、諸先輩方の先見の明に感服いたします。
基本的に、月経困難症および子宮内膜症の治療薬としてしか見なかったホルモン剤ですが、この頃から避妊やその他の症状に対する選択肢の一つとして考え始めました。やはり、病院や基幹病院においてOCという選択肢がないことが一つの課題点として考えられました。またクリニックで勤務することで、さまざまな月経に伴う症状や女性の日常生活の大きな変化など、月経痛ばかり診ていたときとは違うホルモン剤の大きな可能性を感じました。このような選択肢をもっと早くに学んでいればと後悔もあります。患者さんや家族、社会に対する啓発と同時に、若い医師たちがOC/LEPを知って触れる機会がもっと増えていくことが必要になってくるのではないでしょうか。
当然、OC/LEPの処方が増えていけば、それに付随するトラブルも増加します。血栓症、STIなどさまざまな疾患に接することが増えました。血栓症だけでも、この10年で頭、肺、目、門脈などさまざまな部位のものを経験しました。処方する側も、症状の落ち着いている方などと漠然と捉えていると大きな見落としが起きることもあり得ます。今後も多くの方が、OC/LEPを安全に使用できるように、そしてOC/LEPが普及していくように取り組んでいきたいと思います。