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OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか

OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか<51>
OC/LEPで女性の人生を前向きに

第848号


鳥取県立厚生病院(鳥取県倉吉市)木山 智義

鳥取県の現状

 鳥取県は言わずと知れた人口最少県であり、2024年10月現在で、その人口は53万人余りです。22年における鳥取県の出生数は3,752人とその数は減少傾向であり、全国的な少子化の影響は地方にも影響しております。
 一方、鳥取県の人工妊娠中絶件数を見ると、2003年度は2,432件、人工妊娠中絶実施率(14~49歳女子人口千対)は19.3(02~04年まで全国ワースト1位)でしたが、22年度は617件で、同6.4と減少傾向にあり、近年は上位10位から外れるようになってきています。私が06年に医師になってから、当地における分娩(ぶんべん)・人工妊娠中絶の様相も次第に変化してきていることを実感してきており、これにはOC/LEPの普及が役立っていることは言うまでもありません。

医師になってからのOC/LEPとの関わり

 私自身産婦人科医になりたかった理由として、分娩(ぶんべん)や手術など外科手技的なことを学びたい気持ちの方が強かったため、産婦人科の研修医になった際に「たくさんの女性にOC/LEPを広めたい」という気持ちの優先順位はそんなに高くなかったのが正直なところです。今思えば、分娩や手術とその後の継続治療としての家族計画において、OC/LEPをつなげて考えるものでありますが、専門医を取るまでの私はそうした広い視野で学べていなかった上に、患者さんに継続的な情報を還元できていなかったと反省すべき点が多かったように思います。

OC/LEPとの出会い

 1999年に本邦でOCが承認された頃、私は医学部入学を目指して浪人生活を送っていました。恥ずかしながらその当時にはピルという存在すら知らなかった私ですが、2008年にLEPが上市されて以降、月経困難症や月経前症候群(PMS)、月経前不快気分障害(PMDD)など、さまざまな月経関連の問題について深く学ぶようになり、症状改善のために処方することが少しずつ多くなっていきました。また、11年に緊急避妊ピルが発売となって以降は、近隣のクリニックでは夜間対応を行っていないため、当院のような総合病院での対応が必要でした。緊急避妊ピルを導入し、一定の需要があると考えています。また、緊急避妊ピルからOC/LEPへとつながるような体制を構築し、それを通じて女性のSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)を推進していく一助になっていると思っています。

思春期のパートナー

 2015年から現在の鳥取県倉吉市での総合病院で勤務しておりますが、その頃からでしょうか、おもに母親を通じて、「自分の娘が生理で困っているので何とかしたい」という声を多く聞くようになったと感じています。最近は黄体ホルモン製剤を処方することも多いですが、学校に行けないほど生理痛がつらかったが、LEPを使うようになってから休むことがなくなり、部活も頑張っているなどの声を母親から聞くと、「LEPがこの子の人生を変えている」と強く実感しています。

「避妊教育ネットワーク」との出会いとこれから

 2023年、鳥取大学医学部産科婦人科学教室の同門(錦窓会)の先輩である江夏亜希子先生のご推薦により、「避妊教育ネットワーク」に参加することになりました。以降、「女性保健医療セミナー」や「指導者のための避妊と性感染症予防セミナー(SRHセミナー)」、「日本産婦人科医会性教育指導セミナー」など多数のセミナーに参加し、念願の北村邦夫先生にもごあいさつさせていただくことができました。北村先生からは「鳥取県はまだまだ」と叱咤(しった)激励されており、今後周囲を巻き込んで、この鳥取で、できることをコツコツと増やしていく所存であります。少子化の中、産婦人科医として目の前の患者さんだけではなく地域に根差した性教育を行い、SRHRの推進のお役に立てればと思っています。今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。


今月の人

きやま・ともいき
鳥取県出身。2006年、鳥取大学医学部卒業。鳥取県立中央病院研修医、鳥取大学医学部附属病院女性診療科、松江市立病院、博愛病院での勤務を経て、15年より鳥取県立厚生病院。
産婦人科専門医、周産期専門医(母体・胎児)、女性ヘルスケア専門医、鳥取県医師会母体保護法指定医


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