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OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか

OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか<50>
「もっと気軽に婦人科に」そんなクリニックを目指して

第847号


豊橋まちなかウィメンズヘルスクリニック(愛知県豊橋市) 宮本 由記

ピルユーザーとしての学生時代

 私自身の月経との付き合い方を振り返って見ると、小学校の頃から月経痛がひどく、月経初日から3日間痛くなる前に痛み止めを内服するという習慣がずっとありました。両親が薬剤師だったこともあり、痛み止めを内服することに特に抵抗ありませんでした。中学生から高校2年生くらいまでは月経時の鎮痛剤内服のみでなんとか過ごしていた私でしたが、高校3年生、大学生と年齢が進むにつれて痛み止めの内服では症状が収まらないようになっていました。
 大学3年生になって産婦人科の講義を受けた際、鎮痛剤以外の選択肢として月経困難にはOC(当時LEP発売前)も有用であることを知りました。そのまま、講義をしてくれた大学病院の外来で受診させていただきました。このときが私のOC/LEP内服の始まりです。おかげで鎮痛剤を飲んで、つらいときがあった月経時の症状もPMSもなくなり、より大学生活を楽しめるようになりました。

医師になってからのOC/LEPとの関わり

 私自身、産婦人科医になりたかった理由としては、分娩(ぶんべん)や手術など外科手技的なことを学びたい気持ちの方が強かったため、産婦人科の研修医になった際にも「たくさんの女性にOC/LEPを広めたい」という気持ちの優先順位はそんなに高くなかったのが実のところです。今思えば、分娩や手術とその後の家族計画や術後継続治療としてのOC/LEPはつながって考えるものなのに、専門医を取るまでの私は手術や分娩がやりたいばかりで広い視野で学べていなかったし、患者様に継続的な情報を還元できていなかったなと、反省点ばかりです。

婦人科クリニック院長として

 専門医を取得後、挙児希望となり私のLEP生活は終了しました。しかし、すぐに妊娠したわけではなかったので毎月の月経のしんどさも一緒に戻り、内服を止めて改めてLEPのありがたさを感じました。妊娠出産を機に婦人科クリニックで働くようになってから、スポーツドクターの資格や性教育などに仕事をシフトし、私自身の興味関心も女性のヘルスケア分野に移っていきました。そこからは、今までの自身の体験を踏まえ女性のライフステージをより快適に過ごすための一提案として、OC/LEPをスポーツドクターとしても性教育講演でも勧めています。実際に講演をしている際に月経困難の治療や避妊としてOC/LEPが選択肢に入ることを説明する機会は多いのですが、いつも質問として「太るんじゃないか」「気持ち悪くなるんじゃないか」「その後ずっと妊娠しない体になるんじゃないか」といった内容が多く聞かれます。どこで講演をしても質問内容はあまり変わらないのが現状です。それだけ世の中には間違えた情報が定着しているのだなと思います。そのたびに科学に基づいた知識を専門家として提供し、納得や安心につなげられるよう心掛けています。
 どんな情報であっても誰でもアクセスできる現代において、たとえその情報が間違えていても拡散されることは容易です。専門家として科学に基づいた知識を広く提供するためには、SNSなどを活用していくことも必要であると考えています。情報を必要としている人に向けて、届きやすい方法をその時代に合わせて選んでいくことも大切なことなのでしょう。今、行っている方法の一つとしてコロナ禍から「#めちゃ大事」という現役の産婦人科医3人ユニットでの発信をYouTube、Instagramで始めました。
 もう1点、講演に行った際に言われることは、婦人科受診に対する敷居の高さです。少しでも多くの方に婦人科を受診してほしいという思いも込めて2024年9月、豊橋駅前に婦人科クリニック「豊橋まちなかウィメンズヘルスクリニック」を開院しました。コンセプトは「もっと気軽に婦人科に」です。これからはOC/LEPを含めた情報発信の拠点として、多職種連携の一施設として地域での啓発、診療を頑張っていこうと思います。


今月の人

みやもと・ゆき
2003年 山形大学医学部卒
2014年〜 思春期スポーツ外来開始(豊橋市、名古屋市)
2024年9月〜 豊橋まちなかウィメンズへルスクリニック・院長
日本産婦人科学会専門医、女性医学学会女性ヘルスケア専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター


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