私が、日本家族計画協会の「JFPA思春期保健セミナー®」に参加させていただいたのは、ちょうど20年前、低用量ピルの認可からわずか4年、性感染症や10代の妊娠中絶が増えている真っ最中でした。初めて聴講する思春期保健の専門的、実際的な講義! 何から何まで目からうろこで、感動の嵐でした。ノートがびっしり埋まって、その後地域の中学校・高等学校の性教育に関わるようになった際に何度も何度も読み返してスライドを作成しました。松本先生、江幡先生、武田先生、森先生、高村先生、そしてまだお若かった北村先生―といった豪華な指導陣。横浜のセミナーでは、京都の予備校生時代にラジオで聴いてファンになっていた高石ともやさんが生出演されて、びっくり大興奮したことも懐かしい思い出です。「未来」を創っていく思春期を支えることの素晴らしさに気付いた私の「それから」は少し変わりました。
まず、その頃小・中学生だった自分の二人の子どもの意見をしっかり聴くことを心掛け、家庭が安全基地になるように夫婦げんかを極力見せないようにしました(笑)
一緒にセミナーを受けた助産師さん、養護の先生とともに、香川母性衛生学会の中に「性の教育サポートワーキンググループ」を立ち上げ、県内の高校に無料出前講座を始めました。この事業は今も継続しており、毎年20~30校から依頼を受け分担して講演を行っています。また地域の保健師さんたちと、子どもから聞かれて困った性的な質問のアンケート調査を保育士、保護者に行ったうえで「あんたとこ、どなにしよん?」という、幼児の自立、自尊心を育てるためのQ&A方式の性教育パンフレットを作りました。
ちょうどその頃、クラミジア感染、頸部(けいぶ)細胞診異常などで診療していた援助交際に居場所を求める15歳の患者さんがいました。会社員の彼ができ、OCを薦めましたが、子どもができたら人生が変わるかもしれない、と妊娠。心配しましたが、出産後入籍し結婚生活も続けており、今その赤ちゃんは看護大学へ入学。彼女も准看護師の資格を取って働いています。そして出産後から20年近くOCをずっと内服しています。守るものができ、自分の人生を自分の足で歩こうと思ったときにSRHRに気付くのかもしれません。保険適応のLEPは、月経困難症で悩む中高生に薦めるものの、お母さんの反対に遭うということは日常茶飯事ですが、受け入れてもらえればその効果に驚かれます。「周りにも薦めてね」という一言を忘れないようにしています。
思春期と関わる中で、発達障害の傾向のある子、不登校の子の相談にも乗るようになりました。「心身一如」の漢方はそうした子どもにも親にも寄り添えるツールであり、思春期のこだわり、PMSに「甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)」をよく使っています。2009年には東洋医学会漢方専門医も取得しました。
12年からは看護師・助産師教育に携わっており、1・2年生の講義で大学生にSRHRの大切さとともにOC・LEPを教えています。内服している学生も増え、4年生の看護研究で研究課題に選ぶ学生も多く、就職してからも医療者として、先輩として思春期を支えてくれると信じています。2年前からは全学科の学生にも話す機会を得ており、最近は香川県の依頼で「『私』らしく生きるために 産婦人科医がマンガで伝えるオンナの子に知っておいてほしいこと」と題して、漫画冊子「①卵の老化~ライフプランをたてましょう!~」「②子宮頸がん~その予防のために~」のシナリオを作成、次作は「OC・LEP」を、と考えています(写真)。
思春期保健セミナーでの感動から20年、大きな活動はできていませんが、自分の場所で私だからこそできることを、これからも少しずつではありますがやっていきたいと思います。
写真 漫画冊子「『私』らしく生きるために 産婦人科医がマンガで伝えるオンナの子に知っておいてほしいこと」