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OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか

OC/LEPが私の医師人生をどう変えたか<41>
地域におけるウィメンズヘルスケアにもOC/LEPは必要不可欠

第838号


公益社団法人地域医療振興協会 市立恵那病院副管理者/産婦人科(岐阜県恵那市) 伊藤 雄二

地域の現状

 私が勤務する地域病院にも、月経問題を抱えた女性は数多く受診されます。私たちの施設は市内で唯一の産婦人科施設であり、地域を支える産婦人科として妊婦健診・分娩・手術はもちろんのこと、女性のプライマリ・ケアとしての外来診療、健診センターでの子宮がん検診も重要な位置を占めています。特に外来診療においては、年齢を問わず女性のヘルスケアへの対応は必須であり、過多月経、月経不順、月経困難症(月経痛)や月経前症候群に悩む女性が婦人科外来を受診される機会は、不正出血や更年期症状、骨盤臓器脱等と並んで多く、若年から性成熟期女性の月経に関連した問題に対する治療としてOC/LEPが処方されており、多くの患者がその恩恵を受け、効果を実感しています。

若手医師に対するウィメンズヘルスの教育

 わが国ではOC/LEPの普及を含めたリプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)に関する意識は先進国の中でも低いと言われていますが、その原因は住民のみならず医療従事者への教育の問題もあると考えています。多くの産婦人科医が月経問題等に積極的に取り組み、OC/LEPの普及に尽力しておられますが、その内容がプライマリ・ケアとして医学生や初期研修医をはじめとした医学教育の中で取り入れられているとは言い難い状況です。当院は産婦人科専門医研修基幹プログラムの連携施設として専攻医の研修を受け入れており、また総合診療専攻医の産婦人科ブロック研修や初期研修医の地域研修も受け入れています。彼らは臨床研修病院や研修プログラムの基幹病院で多くの重症患者を診療し、手術や分娩等の研修は経験していますが、月経問題等のプライマリ・ケアを外来初診で診察する機会はほとんどありません。当院では研修開始に当たって月経問題やそれに対するOC/LEPの使い方、さらにはSRHRやプレコンセプションケア、包括的性教育等について講義を聞いてもらい、専攻医には実際の外来で指導医の下、診察から治療計画、処方まで行ってもらっています。また外来終了後や週1回のカンファレンスでの振り返りも行なっており、こういった経験は、その後の彼らの診療の幅を広げ、様々な立場からウィメンズヘルスに興味を持ったり、その後の診療につないだりしています。初期臨床研修医にも、今後希望する診療科に関わらず患者の半分は女性であり、医療面接を含めた女性診療における基本的態度や必要な知識を身に付けてもらうことを目標として、研修に先立って専攻医と同様の講義を行っています。すなわち、女性診療に関するプライマリ・ケア研修は当院のような地域における産婦人科研修でこそ学べる領域であり、その教育は必要不可欠であると考えています。

地域の学校教育における性に関する講話と今後の取り組み

 岐阜県産婦人科医会の登録医として、岐阜県から地域の高校生への性に関する講話依頼があり、ここ数年県の事業の一環として当地域の高校生への講話を行っています。その中で月経問題とOC/LEPをはじめ、性別に関係なく全員に性的志向と性自認の話題、SNSに関する話題、さらにはSTIやHPVワクチンの話題を提供しています。このような時代に年1回、あるいは数年に1回の講話による情報提供だけでは十分とはいえませんが、今後も医療従事者や地域住民への教育を継続する中で、月経に悩む女性の問題とそれに対するOC/LEPの有効性・安全性について正しい知識の普及を促し、さらに多くの女性がその恩恵にあずかれるよう活動して行きたいと考えています。


今月の人

いとう・ゆうじ
1985年、自治医科大学卒業。長崎県離島での産婦人科勤務後、佐賀大学、自治医科大学で主に周産期医療に従事。2001年、地域医療振興協会西吾妻福祉病院、15年、総合診療産婦人科養成センター長、17年市立恵那病院副管理者を経て、23年、地域医療振興協会理事。同年、健やか親子21内閣府特命担当大臣表彰受賞。


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