1995年に医師になりました。当時は初期研修医制度もなく、いきなり母校の医局にお世話になることが当たり前でした。外来診療を始めたのは卒後3年目になってからで、日々患者の声と向き合い(向き合っていたつもり?)修練していました。OCが日本に導入されたのは99年9月からですが、公立病院に勤務していた当時は、自由診療はなかなか使えず、ほとんど処方できなかったのを覚えています。当時の月経困難症の治療は、鎮痛剤と漢方薬がほとんどでした。鎮痛剤では限界があるため、「漢方医学」を学ぶために東洋医学を3年ぐらい集中して研鑽(けんさん)しました。多くの先生方の指導のおかげで漢方専門医も取得しましたが、やはり漢方でも限界があり、壁にぶち当たった記憶があります。
2006年に婦人科クリニックを開業しました。開院直後、日本家族計画協会が開催した「OC啓発セミナー」に参加したときに登壇された先生方の講演を拝聴して、衝撃を受けました。「OCは経口避妊薬」と製薬会社から商品説明を受けていた程度の知識と経験しか持ち合わせていませんでした。早速「OC」を診療内容に積極的に組み込むと、月経困難症の治療として十分活用できるという確信に変わりました。やがて「毎月何シート処方したか?」数えるようになりました。今でもその習慣は続いています。やがて保険診療でLEPが発売されてからはLEPが徐々に増えてきており、現在はOC:LEP=1:2となっています。
OC/LEPの副作用や血栓症を極度に心配する方が「OC/LEP以外のホルモン療法」を希望されることがしばしばあります。現在ジエノゲスト0.5㎎錠が月経困難症の治療として処方できるようになったものの、1日2回服用が必要であることからコンプライアンスの低下や不正出血など課題はまだあると思います。今後はプロゲスチン単剤のミニピルが国内承認されることが望ましいと考えています。
OC/LEPの市場はまだまだ伸び続けると考えています。OC/LEPの需要に対して我々産婦人科医が限られた人的リソースに対応できるかどうかが課題となります。オンライン診療やOTC化も避けて通れない課題ではありますが、我々も含め、これからの産婦人科医にも切に願いたいのは、直接患者を診ることなくただ薬剤を処方するだけの状態にならないでいただきたいということです。