今の診療からOC/LEPが無くなったら…なんてことは考えられません。そのくらいOC/LEPは私にとって(多分皆にとってもと思いますが)必須のものです。
14歳女性、妊娠反応陽性のため来院されました。妊娠5週の診断、予期せぬ妊娠だったがうれしい、パートナーは16歳。「パートナーは高校を辞めて仕事してくれる」とのこと。2週後にはパートナーとの関係が悪化し,中絶希望に変わっていました。もし彼女がOC/LEPを知っていれば、もし彼女がパートナーと話し合う関係が築けていれば、彼女は体を張ってこんな苦労をしないで済んだかもしれませんし、人生の選択肢がより豊かになったかもしれません。
27歳女性、PMSあり月経困難症もあるのでLEPを内服しています。パートナーからの暴力を受けていた事がありますが、LEPを開始してから自分の体調を自分で把握できるようになり、自分のことを冷静に見つめられるようになりました。最近ではパートナーとの話し合いができるようになってきました。自分の体を知り自分でコントロールする―このことは単純に苦痛を取り除く以上の意味があることに気付かされました。
当院の職員さん。月経困難症に対してLEPを内服しています。「本当に楽になった」と報告してくれます。「働きがいのある、働きやすい職場づくり」に欠かせないアイテムであることを実感しています。なお、この職員さん、患者さんにLEPを勧める私の横で「私も飲んでいるんですけどこんなに楽なんです!」と力説してくれ、私の診療の一助となっています。
OC/LEPはご存知のように女性の権利運動の中で発展してきました。OC/LEPを処方する中でその歴史を知り、この「権利」について多くのことを学ばせてもらいました。最近はSRHR(セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス&ライツ)の言葉も目にする機会が増えてきましたが、この「権利」にこれからずっと関わっていこう、と思わせてくれたのもOC/LEPです。「月経をコントロールするのは私の権利ですから、ピルを希望します」との言葉を診察室で聞く事ができる将来を目指しています。(当然、「どのような選択肢があってどのようなメリット・デメリットがあるか、私にとって何が最適と思われるか、説明を受けることも私の権利です」ときますから、それに対応できるよう日々鍛錬します)
やっぱり、診察室の中に留まっていてはOC/LEPが必要な人の手元に届かない、と思っています。手立ての一つは性教育です。年、数校からスタートした性教育も、地道ながら少しずつ学校数が増え、リピートで呼んでくれる学校も増えてきました。札幌市に存在する中学高校の数を考えたら全く力になっていないなんて思っていましたが、長年続けていると、養護教諭が養護教諭同士の集まりで話を広げてくれたり、転勤先でも講演を設定してくれたり、教師が感銘を受けてその後の自身の教育に取り入れてくれたり、案外無力でもないかもと思っています。思春期世代と直接触れる機会である性教育の経験が自身の診療にも影響していて、そういう意味でも無駄ではありません。改めて、今の仕事ができるのは皆のおかげ、と感じます。
当院は、「無料低額診療」や「入院助産制度」を実施しており、経済的な困難を抱えた方が多く受診されます。そのような方々と接していると、問題の複雑さに心が折れそうになります。知識の問題だけではなく、生活もままならない経済状態、育ちの環境、暴力、セルフネグレクト、サポートの乏しさ、など挙げ始めたらきりがありません。でも、「権利」は「権利」。この絡まった状態をOC/LEPを活用しながら少しずつ解きほぐしていきたい、それを課題に日々診療しています。